ファイアーエムブレム ヒーローズ
シミュレーション RPG ソーシャルゲーム
任天堂 / インテリジェントシステムズ(日本)
アプリ無料、課金・ガチャ・スタミナあり
レビュー公開:2017/5/31
注目された任天堂のスマホゲーム2作目
国家の興亡と英雄達の活躍を描いた、任天堂の人気シミュレーション RPG シリーズ「ファイアーエムブレム」。(エンブレムではない。通称 FE)
そのファイアーエムブレムを題材にしたソーシャルゲームが公開されています。
「ファイアーエムブレム ヒーローズ」です。 通称「FEH」。
スーパーマリオラン に続く、任天堂2作目のスマホ正式参入作品として注目されていたアプリ。
非常に遊びやすく、インターフェイスも扱いやすく、テンポも良い、とても模範的な作りのゲームです。
しかし内容は「FE を題材にしたミニゲーム」といった感じで、本格的な SRPG ではありません。
加えてスタミナ制+ガチャのオーソドックスなソーシャルゲームであり、「任天堂だからソシャゲを超えたものを」みたいな期待感を持っていると肩すかしになります。
むしろソシャゲらしいソシャゲですね。
ただ、とてもデキの良いソシャゲです。
公開は今年2月で、もう3ヶ月ほど経っているのですが、当時は私が体調不良でダウンしていてレビューできませんでした。
時機を逸していますが、任天堂のスマホ作品をスルーするのもどうかと思うので、今回取り上げておきたいと思います。
ミッションを選択するとスタミナが消費されてバトルが始まる、ソーシャルゲームおなじみのスタイルで進行します。
バトルは戦略 SLG の形式で、四角形のマスの上に味方ユニット(コマ)が配置されます。
移動力の分だけユニットを動かして敵を攻撃し、全員行動したら終了となるオーソドックスなターン制。
敵を倒すと経験値を得られ、レベルアップによりユニットが成長していきます。
ただ、このゲームはマップが横6マス × 縦8マスと狭く、ユニットも味方は4人だけ。
敵も4~6人ほどで、よって短時間で終わり、戦略性は高くありません。
常に全体が1画面に収まっていて、スクロールさせる必要がないので遊びやすいのですが、これだけ「こぢんまり」しているとミニゲーム感が強いですね。
ただ、AI は相応に考えて動きます。
がむしゃらに突っ込んでくるケースは少なく、こちらが攻撃範囲に入るまで待機し、有利な相性や弱い相手を優先して狙ってきます。
よって戦略性が高くないと言っても、何も考えずに突っ込んで勝てるほど弱い訳でもありません。
敵をタップすると移動範囲と攻撃範囲が表示され、「危険範囲」のボタンを押すとすべての敵ユニットの攻撃範囲も確認できます。
それを元に、その中にむやみに踏み込まないようにすることが大切ですね。
相手が近寄ってこない時は、相性が良く、防御力の高いキャラを前に出して誘い込みます。
このゲームのキャラクターは赤・青・緑の3属性と、黒の無属性に分かれていて、青は赤に、赤は緑に、緑は青に強く、不利な相手に攻撃されるとどんなに強いキャラでもあっさりやられてしまいます。
相性を考えて戦うことも大切ですが、属性についてはソーシャルゲームおなじみのシステムなので、今さら説明するまでもないでしょう。
※全体マップとバトルシーン。敵をタップすると移動範囲が青で、移動後に攻撃できる範囲が赤で表示されます。
下にある「危険範囲」のボタンで常に敵の攻撃範囲を表示できるので活用しましょう。
攻撃のミスはなく、戦闘結果は戦う前に画面上部に表示されます。
キャラの「速さ」が相手より5以上高い場合、2連続攻撃を行います。
※レベルアップで上昇する能力は一見ランダムに見えますが、キャラごとに決まっています。
リセットしたりワザと負けてレベルアップをやり直しても、上がる能力は変わりません。
ただ、同じ人物でも個体によって能力が少し違う「個体差」があります。
右は戦闘中のカットインですが、通常の絵とダメージ絵があり、HP が低いとやられているイラストになります。
このゲームの最大の長所は、インターフェイスが素晴らしいところ。
前述したように敵の攻撃範囲を容易にチェックでき、タップの反応も機敏で、動きやアニメーションのテンポも良く、とにかくストレスなく遊べます。
キャラを移動させた後、攻撃は敵をタップ、サポートスキルは味方をタップするだけで発動し、操作はタッチパネルに最適化されています。
この辺りのプレイ感の良さは、さすが任天堂と思えます。
キャラクターは 2D で描かれていて、戦闘時にはイラストのカットインが出て来ますが、マップ画面にはデフォルメされた3頭身のキャラが表示されます。
キャラクターごとに複数の絵があり、戦闘ボイスもあって、しっかり作られているのを感じます。
しかしゲーム自体はオーソドックスすぎて、目新しいところはありません。
ガチャでキャラを入手し、目立った特徴のないバトルを、ソシャゲらしいスタイルで繰り返します。
「すごく出来が良い、すごく普通のゲーム」といった感じ。
正直、これが任天堂ではなく、FE でもなかったら、ここまでヒットしてたかなぁ、というのも本音です。
なお、昔のファイアーエムブレムは「死んだら死亡(ロスト)」というシビアなシステムで話題でしたが、さすがに今作にそれはありません。
やられてもそのマップで経験値を得られないだけです。
ガチャは連続で行うことで、必要な課金通貨(オーブ)が減っていく形式。
通常はオーブ5個ですが、2~4度目は4個、5度目は3個で行えます。
5回連続で行うとオーブ5個分お得になります。
(1セットで5回まで)
しかし連続5回行うには 20 個のオーブが必要で、課金購入すると 10 個で 720 円、23 個で 1600 円。
相応の課金を要求するような作りです…
まあ、10 連ガチャの変形と言えますし、ゲームの進行でも相応にオーブは手に入るのですが。
※ガチャの確率は通常だと★3が 61 %、★4が 36 %、★5が 3 %。
ただし ★5 が出ない状態が5回続くと、次以降の召喚は ★5 の確率が 0.5 %アップします。
この「5回」は連続でなくても構いません。2回やってやめて、その後に3回やってやめて、合計5回出てないケースでも確率はアップし、★5 が出たセットの終了まで累積されていきます。
右は主要キャラが出た時に発生するアニメーション演出。 ただし主要キャラかどうかと、レアリティが高いかどうかは無関係で、アニメ演出が出たけど ★3 ということもあります。
※レベルアップ時に得られる「SP」は、メニュー画面でスキルを習得するのに使います。
また、アップデートでスキル継承も実装されました。
他のキャラのスキルを任意のキャラに習得させられるもので、特に補助スキルがないキャラに移動系のスキルを覚えさせると便利です。
遊びやすくてテンポが良いので、思わず続けてしまうゲームです。
しかし本編のストーリーが、FE のオールスターソシャゲであることに無理やり理由を付けた、どうでもいいような内容で、普段は似たバトルをひたすら繰り返すのみなので、飽きるのも早い印象。
中盤からスタミナがすぐ尽きるのも難点でしたが、これは4月のアップデートでスタミナ上限が増え、緩和されました。
スタミナが気になること自体が「うーん」という感じではありますが。
個人的には、「古いソーシャルゲーム」という印象が強いです。
ソーシャルゲームもここ数年でどんどん変わっていて、昨今は美しい 3D のグラフィックや、派手な攻撃演出、深いストーリー展開などが一般的になっています。
しかしこのゲームはオーソドックスなシステム、控えめな演出で、シナリオも取って付けたようなものに過ぎません。
まあ、演出は地味と言うほどではないし、ボイスもあります。
あまりにアニメ感やゲーム感が強いと一般のユーザーは敬遠するので、それを考慮しているのだと思いますが、それでも昨今のソシャゲとしてはインパクトは少ない。
チェインクロニクル 以降に普及した、キャラクターごとのサブストーリーもなく、ファイアーエムブレムと言う「キャラゲー」を題材にしているのに、その点の掘り下げも乏しい。
誰ガ為のアルケミスト のような物語で引っ張るという感じもありません。
ストーリーとキャラクター性はファイアーエムブレムの大きな魅力だったと思うんですけどね…
決して悪いゲームではないので、もしこれが パズドラ やミリアサが出たばかりの 2013 年に公開されていれば「うぉー! 模範的なソシャゲだ! さすが任天堂!」と感じたと思いますが、2017 年の作品としては「今これかよ…」というのも否めません。
期待感が強すぎたのもあるのでしょうけど。
私的には、非常に「DeNA」感が強いです。
DeNA は任天堂のスマホゲーム展開において、そのサポートを買って出ましたが、そもそも DeNA ってガラケーの怪盗ロワイヤルやモバマスで隆盛したところであり、スマホではずっと弱い。
FFレコードキーパー がヒットしたぐらいで、それもスクエニの IP による人気。
その DeNA がサポートした任天堂のアプリとして考えると、この作品はスタミナ制、ガチャ、シンプルなシステム、ストーリー軽視、ゲーマー向けではない作りなど、すべてが「しっくり」来ます。
ポチポチゲーで成功したメーカーだからか、スマホゲームに対する考え方が保守的な印象で、「ソシャゲはシンプルで良い」という方には良いと思いますが、イノベーション(発想・創造)的なものは感じませんね…
※ストーリーマップや外伝など、ステージ数は多く、会話シーンも多いのですが、シナリオにまったく魅力がないので、ただクリアしていくだけ…
「異世界と繋がって FE のヒーロー達が召喚されました」「それで戦いになりました」というだけの「もうちょっと考えてくれよ」と言いたくなる内容。
正直、オリジナルのファイアーエムブレムの経験者や、戦略 SLG、シミュレーション RPG が好きな人にとっては、物足りない「ソーシャルゲーム」でしょう。
ただ、スマホは携帯電話。ユーザーがみんなゲーマーな訳ではない。
普段ゲームをあまりやらない人は、複雑なゲーム、難しすぎるゲームは敬遠するので、そういう人に対して任天堂のブランドイメージで売るには、確かにこれが正解なのかな、とも思います。
大炎上したスーパーマリオラン と違い、スタミナ制+ガチャ制の今作は、課金面でもそんなに叩かれていません。
この点でも、やはり任天堂が提供する今の時代のスマホゲームとしては、この形がベターなんだろうなと思います。
あの任天堂が課金ガチャに寄っている現状は、悲しくなるのも本音ですが。
盲人の国では片目の者でも王になる、とまでは言わないけど、そんなことを考えてしまう作品です。
それでも、とても遊びやすい作りで、ソシャゲ中心の方なら十分に楽しめる、試しておきたいアプリの1つでしょう。
※Youtube 公式 PV
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