To the Moon
      アドベンチャーゲーム(フィールド移動型)
      開発:Freebird Games(カナダ)
      販売:X.D. Network Inc.(中国)
      600 円、買い切りゲーム
      レビュー公開:2017/5/18
      


死に往く者に最期の夢を…
死に瀕した彼は、月に行きたいという。
    だが、なぜ月に行きたいのか、彼にもわからない…
余命のない者の記憶に入り込み、望む夢を見させる。
      そんな仕事をする二人が、ある男の人生を巡るアドベンチャーゲーム。
      それが「To the Moon」です。

RPG Maker(海外版 RPG ツクール)で作られた 2D の探索型アドベンチャーで、2011 年に PC(Steam、PLAYISM)で公開されて以後、数々の表彰を受けた、非常に評価の高い作品です。
今作はそのスマホ移植版ですが、残念ながら正規の日本語版は PLAYISM の独占配信になっているため、日本語化はされているものの、翻訳はかなり微妙です。
    ただ、物語が解らない訳ではなく、その文学的なストーリーと音楽は十分に堪能することができます。
開発はカナダ在住の中国系クリエイター Kan Gao 氏。
      以前からパソコンでアドベンチャーゲームを公開している、海外の有名なインディーズ開発者です。

    
主人公は Sigmund(シグムント)社という企業に務める、男女2人の社員。
    特殊な装置を用いて臨終間近の患者の記憶を書き換え、幸せな気持ちで死を迎えさせる仕事をしていますが、今回の依頼者は記憶に欠落があるため、その調査を行うことになります。
タップやスライドでフィールドを移動しながら、会話をしたり、あやしい場所を調査する内容。
    スライド操作にクセがありますが、行きたい場所をタップしても移動できるため、それほど操作し辛くはありません。
調査できる場所にはマークが付き、メモ帳のような「小目標」という画面にやるべきことのヒントも書かれているため、行き詰まることはほぼないでしょう。
ゲームが進むと依頼者の記憶の中を探索することになります。
      この時は、フィールドのどこかにある「メモリーリンク」と呼ばれる5つのオーブを探し出します。
      大抵は、その記憶における重要なオブジェを調べるか、会話やイベントを見ることで得られます。
メモリーリンクを集めて次の記憶のトリガー(記憶の欠片)に使うと、次のシーンに移動。
      その際にちょっとしたパズルを行うことになりますが、そんなに難しいものではありません。
    他にもいくつかミニゲームが登場するシーンがあります。

      ※画面下にゲージが出て来てからは、5つのメモリーを探す → 次のシーンに移動という手順になります。
      ただ、どのシーンもそんなに広くないので、迷うことは少ないはず。

      ※シーンを移動すると上部にタイムスケールが出て来て、どの時代の記憶か解るようになっています。
    タイムスケールと言っても移動しているのは記憶の中。
    現実の時間を移動している訳ではありません。

      ※シーン移動時に行うパズル。ボタンを押すと、その列のパネルが全部ひっくり返ります。
    全てのパネルを表にすればクリア。
    左下のボタンでナナメのラインをひっくり返せるのを忘れずに。
ストーリー中心のゲームであるため、問題となるのは翻訳ですね…
      機械翻訳に近いもので、全く意味が解らない訳ではないのですが、表示されている日本語モドキを改めて日本語に訳しながら読み進めなければなりません。
また、セリフの言い回しが元々フランクだったり、独特だったりする場面が多いようで、それが微妙な翻訳によってますます解りにくくなっています。
人物の呼称も、主人公の2人は互いを「Eva(エヴァ)」「Neil(ニール)」と呼ぶのですが、フキダシの表記は「Dr.Rosalene(ドクター ロザリーン)」と「Dr.Watts(ドクター ワッツ)」になっているため、誰が誰だか慣れるまで解り辛い。
    依頼者も本名は「John(ジョン)」ですが、通称は「Johnny(ジョニー)」。
さらに翻訳の問題で、女性が男性的に、男性が女性的に喋ったりするため、ますます男女間の会話で勘違いをしやすい。
      そのセリフが誰のものか、人物表記に注意しながら見る必要があります。
      ストーリーも現在から過去にさかのぼって話のため、やや解り辛く、翻訳がそれに拍車をかけています。
まあ、物語の解り辛さはあえてそうなっている感じもしますし、慣れて来ると展開と翻訳の微妙さが妙にマッチして、ストーリーをさらにミステリアスに感じたりもするのですが…

      ※画面右上のボタンを押すと開く手帳には、そのシーンのヒントや物語の過程、手に入れたメモの内容を見ることができます。
      メモは画像のようにビジュアル的に表示され、進行に合わせて書き変えられていきます。
    たまにチェックすると、物語の流れを把握しやすくなります。

      ※「体」が「體」など、日本では使われない漢字が出て来るのも難点。
      「灯台」は「橙 木臺」になっています。
    人物表記は、まとめると以下のようになります。
    女主人公:Dr. Eva Rosalene。呼称 Eva、表記 Dr.Rosalene。
    男主人公:Dr. Neil Watts。呼称 Neil、表記 Dr.Watts。
    依頼者:Jhon Wyles。通称 Johnny、表記 Jhon。
    使用人:Lily。
    妻:River。
    友人男:Nicolas。通称 Nick。
    友人女:Isabelle。
繰り返しになりますが、翻訳が微妙とは言え、意味が解らない訳ではなく、ゲーム自体は進めやすく作られています。
    英語のままよりはずっと読みやすいし、権利の問題があっても日本語を用意してくれたのは、ありがたいことですね。
      ストーリーは世界的な評価を受けているのも納得で、クリアまで3~4時間ほど。
      終えた時には、映画や小説を見終えたような満足感を得られます。
PC(Steam)では、次の依頼者の物語「Finding Paradise」も公開されています。
    名作アドベンチャーと呼ばれるに相応しい作品と言えるでしょう。
      
      
    
To the Moon(iPhone 版、iTunes へ)
      ・To the Moon(Android 版、Google Play へ)
      ・To the Moon(PC版、PLAYISM へ移動)
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