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古き良き時代の冒険譚 レビュー

古き良き時代の冒険譚古き良き時代の冒険譚
シミュレーション RPG
有限会社だいだい(日本)
本体無料、最後までプレイするには 1920 円
レビュー公開:2017/5/14
iPhone

クソゲー オブ ザ イヤー 2016 大賞作品

クソゲー。それは理想に届かなかった現実。
あまたのゲームソフトの中から、その年を代表するクソゲーを決める「クソゲー オブ ザ イヤー」(通称 KOTY)において、堂々 2016 年最高のクソゲーに選出されたゲーム
それが何を間違ったのか iPhone に移植されてしまいました。
古き良き時代の冒険譚」です。

古き良き時代の冒険譚

ジャンルとしてはシミュレーション RPG になりますが、内容については KOTY の 総評ページ に詳しく書かれているので、今さら言うことはないかもしれません。
iOS 版はオートセーブがある以外、(操作とバグを除き)PS4 / PS Vita 版と変わりません。

KOTY で指摘されていることを簡単にまとめると以下になります。

・ショボすぎる画面
・単純すぎるルール
・シンプルすぎるバトル処理と演出
・思考が遅く単調な AI
・5種類しかないユニット
・レベリングのしんどいバランス
・茶番劇なストーリー

他に操作のレスポンスの悪さも挙げられていましたが、これは iPhone では改善されています。
(カーソル移動の鈍さが指摘されていたが、iOS 版はタップ操作なのでカーソルが1マスずつ動くことはなく、マップもスライドで動かせる)

初見の印象は「20 年前のフリーソフトかよ!」。
とにかくマップがショボい。演出がショボい。インターフェイスもショボい。
これを PS4 で 1944 円で出したのですから、まあ KOTY 候補になるのは当然でしょうね…

古き良き時代の冒険譚
古き良き時代の冒険譚 戦闘シーン

国王の息子&娘たちが、王位継承のためにダンジョンに挑むというストーリー。
ステージクリア型のシミュレーション RPG で、数ステージごとに兄姉がボスとして登場します。
ステージの間には会話シーンが挟まれます。

ステージが始まると味方のユニット(コマ)が配置されます。
移動力の分だけマスの上を動かして、敵のユニットを攻撃。
全員動かしてターン終了したら敵の番になる、オーソドックスなターン制です。

与えるダメージは「攻撃側の攻撃力 - 防御側の防御力」というシンプルな計算式で、攻撃のミスはなく、必ずヒットします。 クリティカルなどもありません。
ダメージの数値は攻撃前に確認することができます。

ただ、とにかく見た目がショボい
Windows 95 時代、もしくはそれより少し前の、初期 Windows 時代のフリーソフトのような見た目で、ベクターで無料配布されているゲームの方がまだマシなレベル。
戦闘時も1枚絵が表示されて、少し攻撃の演出が出るぐらい。

キャラクターのデザインはまだ良いのですが、数が少なく、一般のユニットは「ソルジャー」「ガード」「ランサー」「メイジ」「ヒーラー」の5種類のみで、敵も味方も外見は同じ。
もちろんクラスチェンジなんてありません。

システムがシンプルにも関わらず、AI はキャラを1つ動かすごとに1秒~3秒ほど考えます。

バランスは結構厳しく、ステージ3で早くも敵ユニットのレベルがこちらを大きく上回り、まともに戦えなくなります。
しかし「撤退」でステージを最初からやり直せるので、これを繰り返すことでレベル上げを行えます。

システムがシンプルなこともあり、適度にレベル上げをしないと辛く、ゲーム内でも撤退しながらのレベリングを推奨されますが、それなのにクリア済みのステージには戻れません。

一方、ゲームが進んで強化魔法を習得すると、それを重ねがけすることで大幅に強くできるため、それに頼った戦い方ができます。

また、戦闘の結果を変えられる「サポートカード」があるのですが、撤退の繰り返しでいくらでも入手できるうえに、入手カードの種類がランダムで、なんだかシステムが雑。
ターン終了もいちいちメニューを表示して行う必要があり、やや面倒です。

KOTY や iTunes レビューで「古き良きは低クオリティの免罪符にはならない」と言われていますが、そう感じざるを得ない作りですね。

古き良き時代の冒険譚 戦闘前の画面
※戦闘開始前の表示。画面下の EXPECT の左右にある数値が互いに与えるダメージ。
HP 表示が赤の場合、相手の攻撃によって倒れることを意味します。
緑色の数字は魔力の差。 魔法攻撃は互いの魔力差によってダメージが決まります。

古き良き時代の冒険譚 サポートカード
※サポートカードを入手したところ。カードの見た目もすごく簡素…
スタート地点の近くにカードがあるステージで撤退を繰り返せば、いくらでも入手可能。
ボスステージでは敵もサポートカードを使うので注意。

ボスステージの前、及びボス(兄姉)を打倒すると会話シーンになるのですが、その内容も批判対象になっています。
何というか、全然古き良きじゃなく、ラノベ的な内容。

兄姉は元々仲が良かったようで、別に憎しみ合ってる訳でも、競争している訳でもなく、なんだか和気あいあい。
兄姉が王位を目指している理由も「モテたい」や「ニート王になる」など、なんかテキトー。
物語に魅力を感じたり、その後の展開が見たくて続けるといった類いのものではないです。

そして iOS 版は今時めずらしい「細切れ課金システム」で、本体は無料ですが、最初のボスを倒した後、次のボスまでのステージを 120 円で購入しなければ進めません。
さらに次のボスを倒したら、今度はその先のボスまでを 360 円で買う必要があり、クリアまで合計6回の課金を行わなければなりません。

まあこのゲームの場合、こんなのに 1900 円を一括で出す人はいないと思うので、細切れ課金の方がプレイヤーに払わせやすいのはあるかもしれません…

また(2017/5 時点の)iOS 版には「MP が ∞」という、とんでもないバグがあります。
MP が尽きても魔法を問題なく使用でき、強化や回復もし放題。
(魔法の表示は暗くなるが、構わず選択できる。敵は MP が尽きたら魔法は使わなくなる)

これのおかげで、レベル差があっても魔法で対応できるケースがあり、皮肉にも遊びやすくなっているのですが、でもどう考えてもおかしい…
バグが無いことは KOTY で「唯一の長所」とされていたのですが、その長所が iOS 版で見事に砕け散りました。

ただ、少し擁護すると、このホノボノ系のストーリーは個人的には嫌いではないです。
確かに生死を賭けて憎しみ合うような人間ドラマのあるストーリーの方が引かれますが、日常系が流行っている昨今、これもアリではないでしょうか。
東方とかもエンディングでは和気あいあいしてるし。

ミスやクリティカルのないルールの戦闘も、結果が正確に表示され、キッチリ計算しながら戦えるのは、パズル的で嫌いではありません。
ゲームが進むと壁の向こうに攻撃力の高いメイジがいたりして、相応に戦略が必要なケースも出て来ます。

まあ、粗が多いゲームなので、強化魔法を重ねまくるとか、撤退の繰り返しでサポートカードを貯めて使いまくるとかで、どうとでもなるのですが。

古き良き時代の冒険譚 メイジとランサー
※魔法攻撃は要注意。2マス先を攻撃でき、魔力のないガード(赤)は大ダメージを受けます。
ランサー(緑)は弱いのですが、魔力が高いので魔法のダメージは抑えられます。
自身の魔力をさらに高める魔法を使えるので、攻撃強化と防御強化もかけまくると…

古き良き時代の冒険譚 リンとの会話シーン
※わざわざメタ発言でレベル上げを促してくれるボス姉さん。
王位継承争いと言っても、殺伐とした雰囲気はこれっぽっちもありません。

と言う訳で、これが「クソゲー オブ ザ イヤー 2016」であることに異論はないのですが、私的には「古き良き時代のゲームを作ろうとして、大失敗に終わったクソゲー」という論評は違うかもしれない、とも思っています…

もしかすると作者さんにとっては、これは本当に「古き良き時代のゲーム」であり、その再現は正しく成功しているのかもしれない。

人にとっての「最高のゲーム」はそれぞれ違い、大抵はその人が子供の頃に親しんで、感銘を受けたゲームを挙げます。
例えば、ナムコ黄金期の「パックマン」や「ゼビウス」を挙げる人や、ファミコン / スーファミ時代の「ドラクエ」や「スーパーマリオ」を挙げる人、プレステ / 初期ポリゴン時代の「FF7」や「バーチャファイター」を挙げる人、もっと後期の「ポケモン」や「モンスターハンター」を挙げる人もいます。

そしてこのゲームの作者さんにとっての最高で「古き良き」ゲームは、1980~90 年代のパソコンソフトだったのではないでしょうか。
マップやサポートカード、メニューの簡素さはワザととしか思えないし、シンプルなルールも故意にそうしていると思われます。

ただ、彼にとっての「古き良き」は、大多数にとっての「古き良き」ではなかった。
最近の Steam やスマホのゲームではドットグラフィックが流行で、これも「古き良き」ではあるのですが、それと違ってこの初期 Windows な見た目は、私としてもどうにもショボくて古くさい。

それ以外にもツッ込みどころは多いのですが、理想は人により異なる、ということの気もします。

古き良き時代の冒険譚 課金画面
※課金画面。今どき細切れ課金… そしてこのメニュー…
この簡素さにノスタルジーを感じられる人のためのゲームでしょうか…?

古き良き時代の冒険譚 ニートクイーン
※ニート女王を目指す姉。 最近よくあるパターン。
古き良きを自称していて、ゲームもおもいっきり古風なのに、会話だけ妙に今風なギャップが、
批判をさらに強くしている気がします。

私的には「言われているほど遊べないゲームではない」という印象です。
スマホにはもっとひどいクソゲーがたくさんありますからね…
しかし、これを今 1900 円で買うか? 人に勧められるか? と言われたら、それは厳しい。

ベクターでフリー公開されているゲームのレベルなので、たとえダウンロード用のフリーソフトとか、プログラムを打ち込んで遊ぶゲームをやっていた私でも、その値段では買えない。
ただ、そうしたゲームを模しているんだろうなというのは、なんとなく感じられます。

ともあれ、KOTY 2016 大賞ということで、知名度だけは高い作品。
クソゲーを愛し、クソゲーに突撃したい、クソゲーマニアの方が、クソゲーを堪能する分には良いでしょう。
ステージ3までは無料なので、試すだけならタダですしね。

古き良き時代の冒険譚古き良き時代の冒険譚(iPhone 版)

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