探偵 神宮寺三郎 Oldies
アドベンチャーゲーム
アークシステムワークス(日本)
本体無料、1ストーリー辺り 480 円。
レビュー公開:2017/6/29
30周年を迎えたハードボイルド探偵ストーリー
新宿歌舞伎町の片隅に事務所を構える探偵、神宮寺三郎。
酒はカミュ、煙草はマルボロを愛し、紫煙の向こうに真実を見出す彼が、数々の難事件に挑むハードボイルド推理アドベンチャー。
今年で 30 周年を迎えたこの神宮寺シリーズが、スマホでの展開を開始しました。
「探偵 神宮寺三郎 Oldies」です。
複数のストーリーを集めたアプリで、現時点(2017/6)では「無き子の肖像」「明けない夜に」「キトの夜」の3つのタイトルが収録されています。
どれも新作という訳ではなく、ガラケーアプリで公開されていたもの。
そのグラフィックとインターフェイスを修正したものですね。
このガラケー神宮寺シリーズは DS のダウンロード用ソフトにもなっていて、その際に一度リメイクされていました。
今回のスマホ版は、その DS 版をベースにしたものです。
元がガラケー用ですから、各作品は長編という程ではありません。
しかし短すぎる訳でもなく、一話完結のしっかりした探偵物語を楽しむことができます。
長さはそれぞれ違いますが、1タイトルあたり2~3時間ほど。
ガラケーで4つのアプリで構成されていた物語を1つにまとめています。
ハードボイルドでシブい神宮寺の魅力はモバイルでも十分に再現されており、こうした物語は近年まったく見られなくなりましたから、一周回って新しいかもしれませんね。
ただ残念なのは、おまけの「謎の事件簿」がカットされていること…
アプリ本体は無料ですが、そのままでは各作品の第一章しかプレイできません。
それぞれのタイトルは 480 円で個別に購入する形です。(第一章の終了後に課金画面が現れます)
スマホアプリとしては高めに感じるかもしれませんが、ガラケー版や DS 版と同じ値段です。
コマンド選択式のアドベンチャーゲームです。
見る・移動・会話などのコマンドを実行してストーリーを進めていきます。
進め方が解り辛いシーンはほとんどなく、もし迷っても「煙草」のコマンドで神宮寺が推理を行い、やるべきことを語ってくれます。
会話や調査を何度も繰り返したり、質問に答える場面もありますが、ほぼノベルゲームに近い形ですね。
質問や推理で間違っても特にペナルティはなく、すぐに再選択できるか、言い直されてそのまま進行します。
外見とインターフェイスにガラケー版の面影はなく、大きくて押しやすいボタン、高解像度用に描き直されたグラフィックを備え、派手な演出はありませんが、スマホでも違和感なくプレイできます。
サウンドも相変わらず渋いです。
ただ、メッセージ表示部の背景が暗いのに、文字も暗く表示される場合があって、読み辛いことがあるのは気になります。
明るめの文字色で統一して欲しかったところ。
タイトルごとに人物のグラフィックが驚くほど変わるのも、ブレている印象を受けるかもしれません。
しかし背景とキャラがずっと同じだと焼き直しに見えてしまうし、これは各タイトルの「味」とも言えるでしょうか。
※左は「無き子の肖像」、右は「キトの夜」の神宮寺三郎。タッチが全然違う。
ガラケー初期のものは劇画調、後期作になるほど柔らかい絵柄になっていきます。
※助手の洋子さん。これは「明けない夜に」のデザイン。この人も作品によって外見が違う。
背景はいくつかの作品で共通のものが使われています。
ストーリーは、やはり良いです。
初期の神宮寺シリーズには無理のあるシナリオもありましたが、ガラケーの神宮寺シリーズは「探偵らしさ」が増していて、行く先々で殺人事件が起こるような話にはなっていません。
ヤミ金、極道、不法滞在など、社会の裏面に触れるような物語も展開されます。
初期収録の3作品は事件としては派手な方ですが、他のストーリーには素行調査など、もっと実際の探偵ぽい話も含まれています。
しかし残念なのは、冒頭で述べた通り「謎の事件簿」がないこと…
これは「おまけ」として収録されていた短編ストーリーで、本編とは違ってコミカルタッチ。
しかも助手の洋子さんが目からビームを放ち、腕からロケットパンチを飛ばすロボ洋子になっていて、推理をミスった神宮寺に(たまにミスっていなくても)激しいツッ込みを入れるお笑い暴力キャラになっていました。
これも中期以降の神宮寺の楽しみだったのですが、ばっさりカット…
謎の事件簿はどんどんエスカレートしていったので、1作目から後でまとめて公開する方針なのかもしれませんが、今の時点では無くてガッカリですね。
※イベントシーンではカット絵が。話によってはアクションシーンもあります。
東京・新宿のアンダーグラウンドな一面が描かれます。
※中心人物の1人、新宿淀橋署の熊さんこと熊野警部。
「明けない夜に」の半分は、この人を主人公として刑事視点で進行します。
ガラケーの神宮寺シリーズは、私もスマホを持つ前に愛好していました。
今年の夏には 3DS で新作も公開されるようで、休止したり、権利が移ったり、色々あったタイトルですが、まだまだ健在な模様。
ファンの1人として、こうしてスマホで遊べるようになったのは嬉しいですね。
現時点(2017/6)では、購入済みのタイトルで再び購入の案内が出る不具合がありますが、再購入することで「このアイテムは購入済みです。無料でダウンロードしますか?」と表示され、課金なしで復元できます。
もしくは、タイトル画面で「リストア」を選んで下さい。
脱出ゲームやライトノベル系とは違う、少しレトロでハードボイルドな人間ドラマのアドベンチャーを堪能したい方にオススメです。
※Youtube 公式 PV
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