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Fighting Fantasy Legends レビュー

Fighting Fantasy LegendsFighting Fantasy Legends
アドベンチャー RPG ゲームブック(リメイク)
開発:Nomad Games(イギリス)
販売:Asmodee Digital(米 / 仏)
600 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2017/8/8
iPhoneAndroidSteam

ゲームブックの名作を近代的に超リメイク

読者が行動を選択でき、それに合わせた段落(パラグラフ)を読むことで、多様なストーリーを楽しむことができる小説「ゲームブック」。
日本では 1980 年代後半、ファミコン時代後期の頃に流行しました。

そのゲームブック人気の火付け役となったのが、1982 年にイギリスで刊行された作品「火吹山の魔法使い」。
以後、同じ世界観を持つ「バルサスの要塞」「盗賊都市」などの作品が続々と発刊され、「ファイティングファンタジー」と呼ばれるシリーズとなりました。

そのシリーズを30年の時を経て、大幅リメイクしたゲームが公開されています。
Fighting Fantasy Legends」です。

Fighting Fantasy Legends

元のゲームブックは「本」ですが、これは完全にアドベンチャー RPG として進行します。
「もし扉を開けるなら 14 へ行け」みたいな段落指定はなく、タップで進む方向を指示し、ボタンで行動を選択、カードでアイテムを使います。

よって古典作品をベースにしたものですが、オリジナルを知らない人だとゲームブックだと感じることはなく、普通のゲームにしか思えないでしょう。
それは原作の雰囲気がなくなっているとも言えますが、しかし万人に受け入れられる形になっています。

一方で、謎解きやゲーム進行には古いゲームブックらしさが残っています。
そのためかなり不条理なトラップも多く、初見クリアはまず無理。
何度も繰り返しながら、先に進む方法を模索しなければなりません。
脱出ゲームのような謎解きアドベンチャーと思った方が良いでしょうね。

ただ、リメイクに際して「死んでもアイテムそのままで復活」「経験値による育成要素」が加わっているため、何度もやっていれば困難な敵や、原作ではとても敵わなかったレベルの敵とも戦えるようになっていきます。

価格は 600 円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
海外のゲームですが、メッセージは日本語化されています。
翻訳に若干おかしいところがありますが、読めないレベルではありません。

Fighting Fantasy Legends
Fighting Fantasy Legends 戦闘

ゲームが始まると、容姿を決めた後、キャラクターを作成する画面になります。

主人公には 技術・運・体力 の3つの能力があり、技術と運を 6~12 の範囲で設定することができます。

もちろん多いほど有利ですが、増やすほど体力の最大値が減ります。
体力もないと生き残れないので悩みどころですね。
さらに特殊能力を1つ選ぶことができます。

Fighting Fantasy Legends キャラクターメイキング
※決めた能力はほとんど変わらないので非常に重要。
理由は後述しますが、運は 10 以上にしておいた方が良いです。
特殊能力はラッキーか厄除けが便利な印象。

舞台はファイティングファンタージの世界「アランシア」。
キャラクターを作成すると、主人公はシルバートンという辺境の町に入ります。

ここで冒険者である主人公は、闇の王ザンバーボーンにさらわれた市長の娘を助け出すという、王道極まりない依頼を受け、闇の王を倒す術を持つ魔術師ニコデマスの協力を仰ぐべく、悪名高い港町ポート・ブラックサンドに向かいます。

これはファイティングファンタジー作品の1つ「盗賊都市」の冒頭であり、まずはこの都市での冒険が繰り広げられます。

メイン画面には真上から見下ろしたフィールドが描かれています。
描き込みはかなり細かく、文章で表現されていた様子をできるだけ再現しようとしているのが伺えます。

一方で、道中の文章が減っているため、進みたい方向のボタンを押すだけでサクサクと進行できますが、小説ならではの表現は少なく、挿絵もありません。
その辺は良くも悪くもライトになっている印象。

Fighting Fantasy Legends 盗賊都市
※こんな風に分かれ道では進む方向のボタンが表示されます。
盗賊都市はほぼ一方通行で、進んだら戻ることはできません。

移動していると、様々な出来事やイベント、戦闘が起こります。
これには固定の出来事とランダムイベントがあり、ランダムイベントの存在がオリジナルとは大きく違う点の1つ。

原作は「本」なので、どこで何が起こるかはほぼ決まっています。
しかしこのゲームは「?」マークで示されたイベントエリアがあり、ここでは戦闘になったり、お金を拾ったり、トラップが発動したり、通るたびに異なる出来事が起こります。

もしトラップや事故が起こった場合は「運試し」が行われ、最初に決めた「運」の能力値の数だけサイコロを振って、結果を判定します。

ただ、このゲームで使われるサイコロは普通のダイスではなく、面の1つにマークが描かれていて、他の面はすべて空白。
もし運判定が3のイベントの場合、マークの面が出たサイコロが3つ以上あれば成功、2つ以下なら失敗となります。

戦闘もこのサイコロを使って行われ、まず主人公側が「技術」の能力の数だけサイコロを振り、マークのある面が出た数だけ敵にダメージを与えます。
その後、敵が戦闘力の分だけサイコロを振って、マークの数だけダメージを受け、この繰り返し。

そして運判定に成功したり、戦闘に勝利すると経験値を得られます。
経験値が一定量貯まると、技術か運のサイコロをパワーアップできます。

パワーアップすると、1つ目のサイコロのマークのある面が1つ増えます。
さらにパワーアップすると、1つ目のサイコロはマークの面が3つになります。
もっとパワーアップすると、2つ目のサイコロのマークのある面が増えます。

よってゲームを進めていけば、サイコロの数は増えませんが、当たりマークが出る確率は増していき、ゲームが有利になります。

Fighting Fantasy Legends リーフビーストと炎の輪
※リーフビースト出現! しかしアイテムの炎の輪があれば追い払えます。
アイテムはいつでも使える訳ではありませんが、使用可能な時は下にカードが表示されます。

Fighting Fantasy Legends 戦闘前のダイス
※戦闘は賽の目次第。ブックではなくなっているのでインチキは無理。
ダイスは確率を考えると6面ではないようで、おそらく4面か5面です。
しかし10個あっても5面だと期待値は2なので、そんなに大ダメージは出ません。

トラップにかかったり、戦闘でダメージを受ければ体力が減ります。
最初はどこに何があるか解りませんし、アイテムや経験値も低いので、あえなくやられてしまうでしょう…
しかし体力が 0 になってもゲームオーバーではありません。

倒れると都市やダンジョンの外に放り出されてしまいます。
そして「負傷」と「呪い」を受け、サイコロにペナルティが付きます。
1つ目のサイコロに「×」の面が加わり、運判定や技術判定でこれが出てしまうと、他の面に関わらず失敗になってしまいます。

しかしアイテムや金貨が奪われることはありません。
もちろん経験値もそのままです。
体力は1になりますが、これは他の町で金貨1枚で宿屋に泊まれば全快します。
負傷と呪いも金貨が 10 枚あれば治療できます。

この世界(アランシア)には盗賊都市ポート・ブラックサンドの他にも多くの町があります。
盗賊都市のように中を探険できる訳ではありませんが、北アランシアを自由に移動でき、そしてどこかに「黒い塔」や「火吹山」も存在します。

黒い塔はゲームブック「バルサスの要塞」の舞台で、火吹山はその名の通り「火吹山の魔法使い」の舞台です。
ここではそれぞれ、盗賊都市とは別の冒険が待ち受けています。

ポート・ブラックサンドで魔術師ニコデマスに出会うと、闇の王ザンバーボーンを倒すために必要なアイテムを告げられます。
その中には黒い塔で入手するものも含まれています。
では先に黒い塔をクリアすれば良いのかというと、ここをクリアするために必要なフラグは火吹山にあったりします。

今作は各シナリオのクリア方法がオリジナルとは違い、それぞれの作品が絡み合った形に変えられています。
単に3つの作品をカップリングしているのではなく、3つの作品をベースにした別の展開になっているので、オリジナルを知っている人でも改めて冒険することができるでしょう。

Fighting Fantasy Legends ワールドマップ
※ワールドマップ。盗賊都市でやられて追い出されても、そこから本番。
魔術師ニコデマスに会えたのなら、一旦ポート・ブラックサンドでの冒険は後回しにして、別の土地に向かいましょう。

Fighting Fantasy Legends 火吹山の魔法使い
※火吹山。ここはダンジョンになっていて、ランダム戦闘が多く、普通の RPG みたいな展開になっています。
ここに眠る財宝を手に入れるためには、複数のカギが必要になりますが…

やや難点だと思ったのは、何度もやられていると「負傷」と「呪い」が積み重なっていき、治療費も高額なため、お金がなくなると行き詰まること。

まあ、そうなったらやり直せ、ということかもしれません。
復活できるだけでも原作よりはラクなのですから…

ただ、実は運が高ければ、お金はどんどん稼ぐことができます。
マップの北東の端に「ゼンギスの賭博場」という場所があり、ここではギャンブルが可能です。
そして「ルーンストーン」というゲームでは、運のサイコロを振り合って勝負を行います。

対戦相手のギャンブラーの運のサイコロは8つ。
と言うことは、こちらが運のサイコロを 10 個ぐらい振れて、経験値アップにより運のサイコロの当たり面も増えていれば、高確率で勝つことができます。
ここでコインを増やしておけば、治療費で困ることはなくなります。

冒険中にコインを気兼ねなく使えるようになるので、バランス的にどうかという気もしますが…
逆にこれに気付けないと辛いままなので、ここはやや気になる点でしょうか。

Fighting Fantasy Legends ゼンギスの賭博場
※北東にあるゼンギスの賭博場。運があるならルーンストーンで稼ぐことができます。
ナイフナイフとドワーフサイコロはリアル運次第。ロードしてやり直しはできません。

Fighting Fantasy Legends バルサスの要塞
※バルサスの要塞(黒い塔)は、入る時に6種類の魔法を貰えます。
どれを持っていくかが重要で、いらない魔法は交換可能。
実際にどれが役に立つかは、何度か挑戦してみないと解りませんが…

Fighting Fantasy Legends 対ガンジーアイテム
※黒い塔の2階で先に進むには、この軟膏の瓶が必須。
誰もが行き詰まるポイントなので覚えておきましょう。
ただ、他にも突破方法はあるので、原作とは違う進め方を試してみるのも良いかも。

日本のスマホ版ゲームブックは、2012年に iグレイルクエスト の登場で一時脚光を浴びたものの、紆余曲折を経て潰れてしまいました。
一方で、海外では「ソーサリー」などのシリーズがこの作品のように超リメイクで展開されていて、羨ましく思っていたのですが…
今回、ついにその近代化リメイクのゲームブックが日本語でも登場しました。

これが日本でも話題になれば、ソーサリーや他の作品の日本語化も期待できるかもしれません。
ともあれ、今回日本語化に踏み切ってくれたメーカーに感謝ですね。

アプリとしては「RPG 仕立ての脱出ゲーム」とも言えるので、アドベンチャー系が好きな人なら、ゲームブックのことなど全く知らなくても楽しめます。
懐かしい人にもそうでない人にも勧められるゲームです。

Fighting Fantasy LegendsFighting Fantasy Legends(iPhone 版)

Fighting Fantasy Legends(Android 版)
Fighting Fantasy Legends(PC版、Steam)

※Youtube 公式 PV

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