Strange Telephone
アドベンチャーゲーム
Yuta Yamamoto / HZ3 Software(日本)
480 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2017/8/3
※このゲームは2019年1月に大規模なアップデートが行われました。
電ファミニコゲーマーの こちら の記事で、そのアップデート版を再レビューしています。
このページのレビューは初期版のものです。
不気味な世界が自動生成されるアドベンチャー
電話の向こうは壊れた世界。
電話番号により作られる悪夢の空間を少女が彷徨う、暗い雰囲気のショートアドベンチャーゲームが公開されています。
「Strange Telephone」です。
今年初頭に公開されたインディーズ作品で、ゆめにっきのような不気味な雰囲気、ドットグラフィックのビジュアル、無数の世界が自動生成されるシステムが注目され、公開前から話題になっていました。
そして発売直後は、その雰囲気を絶賛する意見が相次いでいます。
しかしゲームは正直、浅い。
300万通りと喧伝されていた世界は似たようなものばかりで、ボリューム不足は否めません。
そのため発売から少し経ち、落ち着いた意見が寄せられるようになってからは酷評の連発。
私も一度、スルーしていました。
ただ、インディーズ界隈では今でも成功作の1つとされているアプリ。
死体蹴りしたい訳ではありませんが、このまま忘れられていくのも惜しい作品なので、今更ですが取り上げておきたいと思います。
価格は 480 円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
ゲームが始まると、何の脈絡もなく少女が大きな扉の前に立っています。
そしてとなりには電話機の「グラハム」が。
「電話をする」のボタンを押すと、電話機のキーパッドが現れ、6桁の数字をダイヤルできます。
するとその番号に応じた「世界」が生成され、そこに移動します。
各世界は1~2画面ほどの小さなものですが、かなり不気味です。
意味不明なオブジェ、明滅する目や図形、不気味な生物など…
中には竹林や研究室のような場所もありますが、異世界感にあふれています。
オブジェはタップで調べることができ、もしアイテムがあれば入手できます。
入手したアイテムは装備、及びその場で使用することができ、特定のオブジェに特定のアイテムを使えば、何かの変化が生じたり、別のアイテムが手に入ったりします。
「電話を切る」のボタンを押すと、最初の扉の部屋に戻ることができます。
まずは適当に電話をかけ、どの番号の世界に何があるのか、確認していくのが先決ですね。
※大きな扉のある「ホーム」の空間。
カギを手に入れ、この扉を開ければ脱出できますが…
とりあえず、最初は扉の左にあるランタンを手に入れましょう。
これがないとノイズで何も見えません。
※ダイヤル画面。*と♯を含む6桁のダイヤル。
同じ番号にかければ、同じ世界に行くことができます。
ただし、世界を移動するたびに GLITCH という数値が増えていきます。
これが大きくなるほど画面にノイズが走り、全体がおかしくなっていきます。
そして一定量を超えると… 旅は終わります。
GLITCH を減らす方法はありません。
つまりゲームは一定回数移動すると、強制終了です。
やってみると解りますが、終わりまでそんなに猶予はありません。
初回プレイはあっさりバッドエンドを迎えることになるでしょう。
しかしバッドエンドもラストの1つ。
エンディングは5つ用意されています。
延々と捜索することはできないので、メモりながらプレイすることが必要ですね。
※どんどん歪んでいく世界…
GLITCH とはバグや異常のことです。
※開始前のメニュー画面。
背景の QR コードみたいなものは到達したエンディングを表わしています。
しかしこのゲーム、冒頭でも述べたようにボリューム不足は否めません。
世界のパターンやオブジェが少なく、すぐに一通り確認できてしまうのです。
あとは同じような世界を当てずっぽうで巡るのみ。
色々な世界を見て回るという楽しさは乏しいです。
また、これは私の期待が大き過ぎたのもあるかもしれませんが… 世界観が浅すぎる印象です。
例えば、深みのあるゲームは「背景」がしっかり作られています。
そしてそれぞれのオブジェが何かを表現していたり、裏の意味があったり…
それを正確に理解できなくても、実は大した意味なんてなかったとしても、プレイヤーがそこにあるかもしれない何かを察すれば、ゲームに物語や広がりを感じられます。
でも、そういうのが全然来ない。
このゲームが参考にしたという「ゆめにっき」に深い背景があったかというと、やはりなかったと思うのですが、あちらはプレイヤーが色々と考えられるだけのボリュームがありました。
こちらは一見すごく底なし沼のように見えて、ボリュームも設定も意外なほど浅い…
会話できるキャラクターのセリフもほとんど「…。」だし、もうちょっと何かをほのめかそうとする気はなかったのかと思ってしまいます。
※竹林のシーン。不気味な世界に、こうした美しい空間が急に出てくるのはインパクトがあって良いと思います。
が、全体のボリュームが少なすぎるので…
※カテゴライザーというアイテムがあると、ナンバーを入力するだけでその世界に何があるかを確認できます。
これがあると探索がかなりはかどります。
要するに、酷評している人はみんな「期待してたのにガッカリした」というところでしょう。
素材と雰囲気はとても良く、初見はワクワクするのですが、そこがピークで、それから間もなく「アレ? こんなもん?」となってしまう。
雰囲気だけで満足できる人でも、その多くは物足りないでしょうね。
ただ現在、ボリュームを増やすアップデートが準備されているようです。
それが公開され、もっと不気味な世界を探検する楽しみが出来れば、もしくは物語に考察の余地が生まれれば、小さな世界を自動生成して行き来するというシステムは面白いと思うので、化けるかもしれません。
ともあれ、今年前期の話題アプリの1つではありました。
こうしたゲームが好きな方は、アップデートへの期待も含めて試してみても良いと思います。
※Youtube 公式 PV
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