Train Drive ATS 3
鉄道運転シミュレーター
Takahiro Ito(個人、日本)
価格 1300 円、無料で1路線のみプレイ可
レビュー公開:2017/10/15
鉄道ファンが作った「近鉄奈良線」再現ゲーム
鉄道ファンの、鉄道ファンによる、鉄道ファンのためのアプリ。
近鉄奈良線をモデルに運転士の体験ができる、シミュレーターに近い鉄道運転ゲームが公開されています。
「Train Drive ATS 3」です。
鉄道ファンが集まって作った同人的なゲームであるため、風景はかなり大雑把で、電車以外の見た目はイマイチ。
アーケードゲーム「電車でGO!」のようなクオリティは期待しないで下さい。
また、運転と運行の再現に主眼が置かれているため、ゲームとして遊びやすいものではなく、ルールやインターフェイスも非常に解り辛いです。
しかし運行ダイヤに従って、自分が運転する電車だけでなく他の電車も運行されており、状況によってすれ違いや追い越し待ちが発生する点に、鉄道ファンらしいこだわりが見られます。
サウンドもリアルで、慣れれば運転士の気分を十分味わえるでしょう。
アプリ本体は無料ですが、そのままでは1つ目の路線しか走れません。
完全版にして2つ目以降の路線をプレイするには 1300 円の課金が必要で、正直、高く感じます。
ただ、簡単なゲームではないので、1つ目の路線だけでもしばらく楽しむことができるでしょう。
基本的には「電車でGO!」です。
運転士となって、規則と速度制限に従って電車を走らせ、駅の停車位置にできるだけピッタリに止めます。
ただ、このゲームにはチュートリアルが無く、それなのに表示や操作が解り辛く、停車のコツも難解なため、ゲームとしてはかなりやり辛いです。
そこでまず、最初の区間の走り方の一例を解説しましょう。
画面下に「戸閉」という緑の表示が現れ、チンチンと音が鳴ったらスタートです。
画面左(iPad は右)には「マスコン」と呼ばれる「EB E7~E1 N P1~P4」の表示があり、P は加速、B はブレーキを表わしています。
まずは P1 で走り始め、P3 で 35Km/h まで加速し、N に入れましょう。
40Km/h を越えると速度オーバーになるので注意して下さい。
※マスコンとは「マスターコントローラー」の略。
タップでもスライドでも切り替えできます。
画面下のスピード表示の上には、速度制限が表示されています。
これが 70Km/h になったら、P4 に入れて加速。
速度制限は 95Km/h になるので、90Km/h まで上げてから N にしましょう。
※制限速度や残り距離などの重要な表示が小さいのがこのゲームの難点。
最初の区間は、画像の緑矢印のところにある標識を越えた時に制限速度が上がります。
なお、電車はマスコンを N(ニュートラル)にしても惰性で走ります。
動力で走っている状態は「力行」、惰性で走っている状態は「惰行」と呼ばれます。
画面右上(iPad は左上)に次の停車位置までの距離が表示されています。
これが 500m を切ったら B5 に入れてブレーキをかけます。
もし減速しないまま 480m 辺りを過ぎるとブーブーという警告音が鳴ります。
遅れたときは B6 や B7 にして、強めのブレーキで調整しましょう。
ただし EB は緊急ブレーキで、使うと減点を食らうので使用しないように。
速度 40Km/h まで減速したら N に戻して、駅に接近します。
※残り 400m を切っても 80km/h 以上で走っているとオーバーランの危険が。
どの区間も 500m を切ったら停車準備を始めましょう。
駅に差しかかり、残り 120m を切ったら B4 に入れて、再び減速を開始。
ホーム内で、今度は速度 15km/h まで落としましょう。
そして N に戻したら、そのままゆっくり進んでいきます。
※電車でGO! と違い、到着時刻の指定はないので、焦らずに進入していきましょう。
残り 25m になったら B2 に入れて停車準備。
前方左側に薄い赤と青の矢印が見えてくるので、青の矢印が真横に来ているタイミングで停めます。
もしオーバーしそうなら強めにブレーキを入れ、足りなさそうなら一旦 N に戻し、調整して下さい。
赤い矢印の範囲に入っていればセーフです。
止まる直前に B1 に入れて、ゆっくり停車すれば「停止瞬間のショック」の減点を受けません。
うまく停車できれば成功。
画面右(iPad は左下)に「スコア」の表示が出るので押してみましょう。
停車の評価が表示されます。
スコアのボタンを押さないと評価は出てこないので注意して下さい。
なお、赤の矢印の範囲に入っていても、青の位置から大きくズレていると0点やマイナスになってしまいます。
もしオーバーランしてしまった場合…
ATS(自動列車停止装置)が作動して、列車は急停車させられます。
そして自力で停車位置に戻さなければなりません。
この時は、まず運転指令所からの通信が入ります。
それが終わったら、左上付近(iPad は右上)にある「F N B」の表示の B を押してレバーサ(ギア)をバックに入れます。
その後、右側(iPad は左下)にある「ATS 復帰」のボタンを押し、P1 や P2 で加速してバック。
停車位置に停めたらレバーサを F に戻します。
「電車でGO!」のようにオーバーランしても即ゲームオーバーになる訳ではありませんが、後始末を説明不足の状態でやらされるため「どうすりゃいいのコレ?」となりがち。
運転中に速度超過した時も、少しでもオーバーした瞬間に ATS で停められてしまいます。
その方がリアルなのだと思いますが、ゲームとしてはかなりシビア。
あくまでシミュレーターとしての作りを優先している形ですね。
※これは2区間目のワンシーン。
普通に走っていれば、ここで併走&すれ違いを見ることができます。
しかし他の列車もダイヤに従って走っているため、自分がゆっくり走った場合、これらの電車は区間を先に通過し、併走やすれ違いは起こりません。
自分のペースと他の列車の影響で、発車待ちなどが発生することもあります。
2つ目の区間はいきなり速度制限が 90km/h なので、一気に 85km/h まで加速しましょう。
ただし途中で 65km/h の速度制限が出るため、警告が鳴ったらすぐに B5 以上で減速すること。
他の区間も1つ目の区間の応用で運転できると思いますが、勾配(坂道)には注意して下さい。
下り坂だと N にしていても加速するので、ブレーキをかけておかないと速度がオーバーします。
ホームの線路が勾配になっていて、停まり辛い駅もあります。
難しいゲームですが、慣れてくればコツが解ってくるはず。
前作(Train Drive ATS 2)は最初の路線がいきなり勾配だらけで、下り坂の直後に駅が来るといったトラップのような区間が冒頭から連発されたのですが、今回の最初の路線は平坦で、比較的走りやすくなっています。
難点は、周囲の建物のショボさですね…
前作も風景はイマイチだったのですが、それでも特徴的な建物が多くあり、それなりに見栄えがしました。
しかし今回は、明らかに前より悪化しています…
駅の見た目が簡素だし、建物の配置がスカスカでテクスチャ(表面の絵)も粗く、しかも一部浮いていたりする。
同人的なソフトだから仕方がない、というレベルを越えるチープさを感じます。
鉄道ファンにとっては鉄道以外はどうでも良いのかもしれませんが、もうちょっと頑張って欲しいのが本音です。
※踏切の様子。ノッペリしていて微妙。
周りの建物のテクスチャは妙にぼやけているし、右の建物はなんだか浮いている…
※地下駅もありますが、ホームはもうちょっと… いや、かなり何とかして欲しい。
今回は大阪と奈良を結ぶ「近鉄奈良線」が舞台ですが、それ以外は Train Drive ATS 2 と大差ありません。
路線と運行の再現に力を入れているようで、その点でも鉄道ファンらしい作品です。
ゲームファンとしてはもうちょっと、ゲーム的な拡張や改良を求めたくなるのですが、そういう方向で作っているのではないのでしょうね。
しかし 電車でGO! がなくなった今、スマホ / タブレットで日本の路線を運転できる本格的な鉄道シミュレーションは、このシリーズしかありません。
そして慣れれば十分、ゲームとしても楽しむことができます。
ともあれ最初の路線はタダなので、興味のある方は試してみると良いでしょう。
Tweet |