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信長の野望・武将風雲録 レビュー

信長の野望・武将風雲録信長の野望・武将風雲録
歴史シミュレーションゲーム
コーエー(日本)
価格 1900 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2018/1/13
iPhoneAndroid

初期の「信長の野望」の完成形、支持率 No.1

全国版から数えて、シリーズ3作目。
そして今になっても「信長の野望」の中で、もっともユーザーから支持されている作品。
それがスマホ / タブレットに登場しました。
信長の野望・武将風雲録」です。

信長の野望・武将風雲録

信長の野望シリーズは、ゲーム内容が過去何度も変化しています。
初期のものはコマンドを実行して内政を行っていましたが、マップ上に施設を作るタイプになったり、RTS(リアルタイム制のシミュレーション)になったり…

この「風雲録」はそんな信長の野望の中で、大きな変化を迎える前の、もっともバランスの良い作品でした。
多くの戦国武将が登場し、コマンドを実行して数値上げの内政を行い、徴兵と訓練で兵力を整え、オーソドックスなターン制の合戦で領地を広げる…
初期の信長の野望の楽しさが、ここにはあります。
また、茶器や鉄砲といった戦国を彩る要素がピックアップされたのもこの作品からです。

ちなみに私見ですが、信長の野望シリーズを簡単に説明すると…

初期版はまだ国が少なく、「信長の野望・全国版」はその完成形と言えますが武将がおらず、2作目の「戦国群雄伝」は武将が登場しますが、まだ発展途上と言えました。
3作目は今回の「風雲録」。
4作目の「覇王伝」はマップが広すぎでシステムも面倒になり、時間かかりすぎ。
5作目の「天翔記」は集大成的な作品でしたが、武将の育成システムが本来の武将の能力値を殺していました。
6作目と7作目の「将星録」と「烈風伝」はシヴィライゼーションのように全体マップ上で内政や移動を行う形となり、これはこれで面白かったけど違うゲームに。
8作目の「嵐世記」は初期の内政に戻りましたが RTS 化した戦闘に粗が多く、9作目の「蒼天録」はリアル戦国すぎて取っ付き辛い作品でした。
10作目の「天下創世」は箱庭内政+RTS の合戦で完成度は高かったのですが初期の趣はなく、11作目と12作目の「革新」と「天道」は1枚の大マップ上で内政も戦闘も行う、完全にリアルタイム制の別のゲームに。
13作目の「創造」も全国マップ上での進行がメインで、RTS な信長の野望が続いています。
14作目の「大志」は こちら でレビューしていますが、内政が簡略化されました。

やはり信長の野望と言うと、初期のシステムを思い浮かべる人が多いと思うので、風雲録が良かったと言う意見は妥当であり当然と思えますね。

6作目以降はシステムが頻繁に変わったので、変化が悪いという訳ではありませんが、洗練される前に別の物になってしまい、印象も薄くなっている感があります。

ちなみに「信長の野望 30 周年記念アンケート」(創造発売前)の人気ランキングでは、1位が風雲録、2位が革新、3位が天翔記、以下 天道、烈風、群雄、全国版&天下創世 と続いています。

アンケートとしては新作の方が有利なはずで、古いものは知らない世代も多いでしょうから、それを加味しても風雲録が1位という点で、どれだけ人気なのかが解ります。

今回公開された風雲録は 2008 年に発売されたニンテンドー DS 版(信長の野望 DS2)がベースで、浅井長政&久政親子のコントのようなチュートリアルと、合戦のみを行う「群雄争覇モード」が加えられており、さらに合戦中に発動できる「戦術」も追加されています。新武将の作成も可能。
3DS の改修版で追加された新シナリオと、約100人の新武将も加えられています。

DS 版の移植のため、スマホレベルのグラフィックではなく、DS なりの見た目ですが、オリジナルよりは綺麗ですね。

価格は 1900 円と高めですが、課金・広告・スタミナ等はありません。

なお、初期版には「諜報」などのコマンドが全く成功しないバグがありましたが、アップデートで改善されています。
また、起動時にオンラインチェックが入ることについての批判がありますが、これは最近のメーカー製の買い切りアプリでは一般的です。

Android、特に中露や南米において、アプリの不正コピーが横行している昨今、このオンラインチェックが一般化したからこそ、スマホへの大型買い切りゲームの移植が実現していると言えます。
(ただ、電波や Wi-Fi が届かない場所で起動することもあるでしょうから、その旨の明記や、それを加味したチェックにして欲しいのは確かです)

信長の野望・武将風雲録

シナリオは(クリア後に出てくる隠しシナリオを除くと)1555 年から 1582 年までの4つ。
難易度は「入門」「実力・初級」「実力・上級」の3段階。

実力モードでないと歴史イベントが起きませんが、簡単なゲームではなく、初級でもコンピューター側に明らかなハンデがあるので、初めての人は無理せず入門にした方が良いでしょう。
討死や寿命は ON/OFF が可能。

ゲームが始まったら、まずは内政です。
商業」で金収入、「開墾」で米収入を高め、治安で一揆を防止します。
兵士には俸禄(給料)が必要なので、まずは大兵力を維持できる経済力を付けるのが先ですね。

コマンドを選択し、実行する武将を指定すると、その政治力に応じて国のステータスが上がります。
武将は一度にまとめて選択することが可能。
武将は月に1回しか行動できず、さらに各国に「行動力」があり、これがなくなると武将が残っていてもコマンドは実行できません。

1月に税収、7月には米の収穫があり、米は合戦の兵糧になると同時に、取引で換金できます。
資金に余裕ができたら「徴兵」を行って兵士を増やし、「訓練」で質を高めて軍事力を増強。
たまに対外の「諜報」で他国の様子を確認し、こちらの方が有利なら「合戦」で攻め込んで、領土の拡大を狙います。

要するに、月ごとにコマンドを実行して富国強兵を行う、オーソドックスで昔ながらのターン制の「信長の野望」です。
小難しいシステムはなく、初代の信長を元祖とする数値上げのゲームであり、簡単に理解することができるでしょう。

一応、「貢物」や「同盟」などの外交、「寝返」や「流言」などの計略、「共闘」による援軍要請もありますが、友好を結んでも来るときは攻めて来るし、資金にはそんなに余裕がないので、あまり外交で無駄遣いはできません。
また、実力モードだと計略はまず成功しません。

信長の野望・武将風雲録 内政シーン
※行動力の回復量は大名や城主の政治力に応じていて、城主は月に何度でもコマンドを実行できますが、行動力の消費量が武将の2倍になっています。
内政実行時、たまに武将が「俺にやらせてくれ!」と言ってくる場合があり、任せると効果が高くなるのに加えて忠誠度がアップします。
面倒ですが、内政の選択&キャンセルを繰り返して進言が来るのを待つ手も…
右は忍者ハットリ君。忍者に諜報を任せると 100 %成功しますが、「この人は忍者です」みたいな表示はないので、判別には多少の史実知識が必要。

合戦は、まず出陣する武将と兵士数を決めます。
兵農分離とか身分による最大兵力とか、そんなややこしいものはありません。
兵種には 足軽・騎馬・鉄砲 があり、鉄砲は事前に用意しておく必要がありますが、騎馬はお金さえあれば自由に編成できます。

スマホ版(及び DS 版)の風雲録の特徴として、武将勇将・猛将・知将 の区分があり、同じ分類の武将を多く出陣させると戦闘力にボーナスが付きます。
基本的には少数の有力武将に兵を集中させた方が良いのですが、このシステムでそれを幾分か緩和しているようです。
と言っても、やはり兵力は集中させるべきですが。

また、スマホ版(DS 版)の風雲録には「戦術」というものが各大名家に3つ用意されていて、例えば織田信長だと、しばらく移動力が上がる「急襲」、敵の士気と兵糧を下げる「火攻」、鉄砲を連発する「三段構え」を持っています。
このうち三段構えは織田家や雑賀衆しか持っていない固有戦術です。
合戦中に3度しか使えませんが、足軽を弓隊に、鉄砲を大砲にする技能もあり、スマホ版の攻略のポイントになっています。

合戦はターン制の戦術シミュレーションで、ファミコンウォーズやファイアーエムブレムのようなおなじみの方式です。
移動力の分だけ部隊を動かし、全部隊を移動させたらターン終了。敵に接したら攻撃。
この繰り返しですね。
兵士数が 0 になった部隊は壊滅し、総大将を倒せば勝利です。

ただ、開戦前に防御側が「籠城するかどうか」を選びます。
籠城しなかった場合は「野戦」となり、屋外での戦いになります。

野戦には昼夜の変化があり、夜間や雨天の時は視界が効かず、敵が見えません。
そして見えない敵に接すると「どちらかが」奇襲を受けます。
また「本陣」があり、これを敵に奪われると兵糧を失って士気が激減、ほぼ戦えなくなります。
場所によっては、部隊が船になる「海戦」になることもあります。

籠城した場合、戦いは「攻城戦」となります。
マップが城になり、攻め手側は門を破壊して、時には壁をよじ登り、本丸を目指さなければなりません。
防御側は櫓や本丸にいれば、鉄砲や弓で中から遠距離攻撃が可能。
鉄砲をバンバン撃ってれば数倍の敵も撃退可能で、防御側がかなり有利です。

ただしスマホ版は、攻められると国力が減少、籠城すると大きく下がります。
籠城だと兵糧も多く消費するため、メリットばかりではありません。
戦える兵力があるなら、国の荒廃を避けるため野戦に持ち込みたいところです。

信長の野望・武将風雲録 合戦シーン
※左は出陣前の部隊編成。同じ種類の武将が複数いるとボーナスが付くので、武将が増えたら組合わせを決めておきましょう。
右は合戦中に戦術を使ったところ。武将がそれっぽいセリフを喋ります。
野戦は夜襲に注意。戦術の「看破」があれば確実に奇襲実行側になれますが…

信長の野望・武将風雲録 本陣急襲と流れ弾
※左は騎馬隊でうまく迂回し、敵の本陣を突いたところ。
これで勝利確定ですが、兵糧は燃やしてしまうので奪うことはできません。
右は種子島に種子島が命中したシーン。
鉄砲の銃撃や騎馬の突撃により、合戦中に武将が討死する場合があります。

風雲録の特徴と言えるのは、技術と文化。
それはスマホ版(DS 版)でより重要になりました。

内政コマンドで「技術」を上げると、100 で金山を探せるようになり、200 で国ごとにある「技法」を得られます。
技法はスマホ版から導入されたもので、行軍・弓術・兵法・馬術 などがあり、これを2つ組み合わせることで新たな「戦術」を取得できます。
例えば、行軍+兵法で状態変化を解除する「沈静」、弓術+兵法で足軽を弓隊にする「弓構」、行軍+馬術で機動力を上げる「疾風」を得られます。

これは合戦前に自由に付け替えられるので、領国が広がって多くの技法を覚えたら、状況に合わせた戦術を装備できるようになります。
オリジナルの風雲録は技術の高い国は1つあれば良かったのですが、この仕様により、各領土の技術を 200 以上に高めることも重要になりました。

ただ、多くの領国を持っていないと活用できないシステムなので、もっとも肝心な序盤に利用不可。
また、足軽で遠距離攻撃できるようになる弓構が強力すぎて、攻城戦の難易度が大幅にアップ、逆に鉄砲の有用性は落ちており、本来のバランスが変わっている印象もあります。

なお、技術は高いほど商業や開墾の効果が上がり、300 を超えると鉄砲、600 を超えると鉄甲船の製造も可能になります。
これはオリジナルと同様で、鉄甲船があれば西国への進出で有利になるでしょう。
ただ、そこまで技術を上げるのが大変だし、すごくお金がかかりますが。

もう1つの「文化」は、オリジナルでは収入や取引の効果と、武将の成長を高める効果がありましたが、どちらかと言うと効果より、ゲームを彩る装飾的な意味が強いものでした。
しかしスマホ版は 75 以上にすることで国ごとに備わっている「文化効果」が発動。
疫病や災害の軽減、コマンド効果の上昇など、もっと直接的な効果を得られるようになっています。

しかし文化は簡単に上げられるものではなく、価値の高い茶器を所有し、教養の高い家臣と共に茶会を催さなければなりません。
茶器は所有する武将を合戦で捕らえるなどしないと得られず、田舎大名だと茶会の開催は当面無理。
ただ、文化は高い国が1つあれば、他の国もそれに影響されて少しずつ上がっていきます。

信長の野望・武将風雲録 技術革新
※技術革新で技法を入手。使える戦術が増えます。
欲しい技術がある国を優先して攻めるのも戦略の1つ。
右は鉄甲船で海戦しているシーン。鉄甲船は海上移動力が2、砲撃の射程が3。
雨が降ると砲撃不可ですが、普通の船は海上移動力1なので、逃げながら撃っていればノーダメージで勝つこともできます。

信長の野望・武将風雲録 文化と茶会
※お上品な皆様方がお茶会を愉しまれているシーン。
背景や和歌は季節に応じたものが用意されています。
茶人が来訪してきた場合、その茶人のランクに相当する茶器がないと失敗に終わります。
ただ、失敗しても文化は幾らか上がります。
自分で実行する場合、茶器だけでなく、参加メンバーの教養も成否に影響します。
右は画家イベント。お金をたんまり持っていれば発生する事があり、文化を上げてくれます。

信長の野望・武将風雲録 チュートリアルと義理切りチーム
※左はチュートリアルで登場する、やたら表情が豊かな浅井長政と、かつてないダメオヤジになっている浅井久政。三國志もそうでしたが、スマホ版はチュートリアルが笑えます。
右は「群雄制覇モード」の1シーン。史実でアレな皆さんが信義について語っておられます。
群雄制覇モードはステージ制の合戦モードで、クリアすることで武将が集まります。
初期の信長の野望は菅野よう子さんによる BGM も魅力。
私的には初代のアレンジ曲である信長のテーマと、京風大名の曲が好み。

コンピューターの思考時間が短いこともあり、サクサク進められます。
開墾や徴兵なども、かける資金や徴兵量が固定されたおかげで、数値を入力する手間がなくなり、ボタン1つで行えるようになりました。
本来のゲーム性を維持しつつ、手軽に遊べるようにアレンジされています。

やはり古いゲーム、おまけにリメイクされたと言っても DS 版がベースなので、先日公開された最新の信長の野望「大志」と比べると、グラフィックや演出では大きく劣ります。
それらもゲームの重要な要素、やはり今となっては大志の方が… とも思うのですが、冒頭で述べたように初期の信長と今の信長は全く別のゲームなので、どちらもあるのはありがたいですね。

iOS 版の大志の発売直前に風雲録を出したのは、大志だけだと過去作との比較でアレコレ言われるだろうから、じゃあ過去作も出しておけ、みたいな感じの気もします。

10 年前の DS 版の風雲録で 1900 円はちょっと高い印象もありますが、長く信長の野望をプレイしてきたユーザーにとっては、しっくり来るのはこちらでしょう。
基本的には「思い出補正」がある人向けですが、歯応えのある難易度で、国作りの楽しさもあり、シリーズのファンなら見逃せない作品だと思います。

信長の野望・武将風雲録信長の野望・武将風雲録(iPhone 版)

信長の野望・武将風雲録(Android 版)

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