Playdead's INSIDE
鬱ゲー 横スクロール謎解きアクション
Playdead(デンマーク)
アプリ本体無料、フルバージョン 840 円
レビュー公開:2018/2/8
薄暗いディストピアの先で少年が見るものは…
追われに追われて、一人きり。
少年はいつの間にか、闇のプロジェクトの中枢に引きずり込まれていた…
少年がモノトーンの世界で死に続ける世界的ヒットの鬱ゲー「LIMBO」から6年。
極限まで作り込まれた、新たな退廃的で寂寥とした作品が iOS に移植されました。
「Playdead's INSIDE」です。
LIMBO と同じ横スクロールの謎解きアクションですが、より洗練された内容になっています。
一部に難しい場面もありますが、それほど死にゲーという訳ではなく、謎解きの難易度も適度で、前作より遊びやすいゲームになっています。
そして映像表現は、もはや職人の域に達しています。
グラフィックの書き込みはもちろん、各シーンの演出や表現、キャラクターのアクションの細かさ、様々な解釈を想起させる世界観の構築など、すべての作り込みが破格です。
もはやゲームという形を取った、一流の映像作品。
価格は 840 円。アプリ本体は無料ですが、課金してフルバージョンにしないと体験版の状態で、序盤しかプレイできません。
対応は iPhone 6s 以降、iPad Air 2 以降なのでご注意下さい。
セリフや文字が出てこないゲームなので、言語の問題はありません。
スティックやボタンのようなものはありません。
画面を左右にスライドして移動し、上やナナメにスライドでジャンプ。
箱やスイッチを長押しするとそれをつかみ、押したり倒したりすることができます。
壁があるなら跳んで乗り越える、壁が高いなら箱を押してきて踏み台にする、箱が見当たらないならロープをよじ登るなどして別の道を探してみる…
そうした謎解きを繰り返しながら先に進んでいきます。
フタを持ち上げたり、瓦礫を崩すといった様々なアクションがありますが、それらでどんな操作をするかも謎解きの1つでしょう。
全体としては、色々試しているうちに解法が解るようになっていて、パズルと言うほど難解ではありません。
謎解きゲームとしては模範的な作りです。
ただ操作については、タッチパネルであることもあり、思わぬ方向にジャンプするといったミスが起こりやすいです。
豊富なアクションをシンプルな操作で行え、反応も良いのですが、操作性は良好とまでは言えないでしょうか…
しかし失敗しやすい場面の直前には必ず再開ポイントがあり、ほとんど戻されずにリトライを繰り返せます。
またキャラクターの動きが非常に滑らかで、本当に生き生きとしています。
※雨に打たれる少年と、その足下に集まるヒヨコたち。
ヒヨコの動きは本当に細かく、少年の水を拭うしぐさもとても自然。
静止画では解りませんが、雨の表現も素晴らしいです。
※屋根の隙間から漏れる光を浴びる少年。
このシーンは光源が動いていて、影もそれに合わせて移動します。
ここも静止画では解りにくいですが、動いているシーンはとても印象的です。
※水中を泳ぐ少年。中盤以降、水の中のシーンが増えてきます。
水面の表現がとても綺麗で、ここも静止画では(以下略
謎解きゲームとしての完成度もさることながら、やはり今作の見所は演出と表現でしょう。
夜の森に始まり、雨の降りしきる牧場、美しくも寂寥感のある工場、水の表現がリアルな水没施設など、すべてのシーンが絵になります。
また、謎の人々の行列や、それを管理する男達、無機質で廃墟化した建物には、ディストピア(管理社会)やポストアポカリプス(終末世界)の雰囲気を感じられます。
細部の作り込みもハンパではなく、鳩がいる木の板を渡るシーンでは、鳩がリアルに飛び去り、木の板がリアルにきしみ、ジャンプすれば大きくたわみます。
文字では伝わりにくいのですが、瓦礫やほこり、光や影の表現などがすごく丁寧に作られていて、それらを1つ1つプログラムしていく労力を考えると、もはや途方に暮れそうになるレベルです。
正直、ストーリーは訳が解りません。
そもそも解るように作られておらず、何も考えずに見れば、バラバラのシーンをズラズラと繋げた挙げ句、投げっぱなしで終わってしまった感もあります。
しかし、それが気にならないほど1つ1つのシーンに説得力があり、全ての場面に見応えがあります。
また細かい伏線や世界観を示すものが背景に散りばめられていて、それがゲームに深みを与えています。
※謎の人々の行列。自我を持たず、ただマシンのように歩いているだけに見えます。
ここで何が行われているのか、プレイヤーは推測しかできませんが…
※豚を踏み台にしてヘルメットをかぶったシーン。
これをかぶっている間、奥にいる人のようなものを操ることができます。
このシーンは色々と考察が飛び交っている模様。
※この丸いボールはシークレットアイテムで、壊すと実績を獲得できます。
全てのボールを破壊すると、ある場所に入れるようで…
クリアまではおよそ5時間。しかし濃密な5時間です。
前述したように各シーンの作り込みが凄いので、ボリューム不足な感はありません。
むしろこのクオリティで5時間分よく突っ走ったなと思えます。
雰囲気やストーリーが「鬱ゲー」なので、万人向けとは言えません。
「楽しいゲーム」が好きな方には、この作品は合わないでしょう。
こうした独特な雰囲気のゲームや、考察好きの人が好む作品は、得てしてネット上で高評価を受けやすいので、大ヒットにはその影響もあると思います。
しかし本当にビジュアルと演出が「凄い」作品です。
物語に繋がりがある訳ではないですが、まさに LIMBO の進化形。
ラストに賛否がありますが、メランコリックな作品が嫌いでない方なら必見です。
・Playdead's INSIDE(PC版、Steam へ)
※Youtube 公式 PV
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