逆転裁判6
推理アドベンチャーゲーム 法廷バトル
カプコン(日本)
本体 120 円 + 全章一括購入 2400 円
レビュー公開:2017/10/4
ダブル主人公で展開される逆転裁判の本編新作
裁判で被告人の判決を争う「法廷バトル」の推理アドベンチャー「逆転裁判」。
先日、新シリーズとなる「大逆転裁判」のスマホ / タブレット版が公開されましたが、続けざまに本編の最新作も公開されました。
「逆転裁判6」です。
この有名シリーズの移植版が、1ヶ月も経たないうちに連続で出されたのは、さすがにオドロキです。
2016 年の6月に 3DS で公開されたソフトの移植で、スマホ / タブレットに合わせてグラフィックが細密になっており、大逆転裁判と同じく「高画質バージョン」と言えます。
こちらは本編のナンバリングタイトルであるためか、大逆転裁判のような舞台や雰囲気が刷新されたものではなく、これまでの流れを汲む逆転裁判です。
主役はおなじみの「ナルホドくん」こと 成歩堂 龍一 と、「オドロキくん」こと 王泥喜 法介 のダブル主人公。
章や場面によって担当キャラが入れ替わり、他の新人弁護士(希月心音)が主人公になる場面もあるなど、群像劇のようになっています。
カガク捜査やサイコロックなど、これまでに出てきた一通りのシステムが登場。
人物も過去作のキャラが多く出てきて、ストーリーも一区切りが付く、集結編のような作りになっています。
よって旧作を知らなくても遊べますが、過去作を知っている方がより楽しめるでしょう。
事前の告知では、1~3に登場した霊媒師のパートナー 綾里 真宵 が再登場することがアピールされていました。
ただし今作の監督は、1~4+大逆転の巧舟さんではなく、5と逆転検事シリーズの山崎剛さん。
よって監督が違うことによる作風の変化があり、5で違和感を感じた人は、同様のものを今作でも受けるでしょう。
良く悪くもタクシュー逆裁ではなく、山崎逆裁ですね。
価格は 大逆転裁判 や 逆転裁判5 と同じく、アプリは本体 120 円、ただし本体だけではプレイできるのは1章のみ。
各シナリオは単品 720 円で、全章一括購入で 2400 円となっています。
また、特別編のシナリオが 360 円で用意されています。
逆転裁判4 の時、「本体だけで全部遊べないなんてサギだ!」みたいな意見が主に低年齢層から殺到しましたが(今回もチラホラ見られる)、120 円で逆転裁判が全部遊べる訳がないので悪しからず。
落ちるという報告も見られますが、当方で(新 iPad Pro で)確認した限りではそうした症状は見られません。
ただし大容量のアプリなので(1.14 GB)、インストール後は一度 本体の再起動 を行っておいた方が無難でしょう。
また、空き容量は 2GB 以上は確保しておきましょう。
今回は舞台設定が特徴的で、「クライン王国」という仏教国が中心となります。
この国には「弁護罪」という、犯罪者を弁護すると同罪として罰せられるという法律があり、さらに裁判の判決は死者が最期に見た光景が映し出される巫女の儀式「御魂の託宣」によって下されます。
よって元々、弁護士は不在。完全アウェーの中で戦うことになります。
今回の新システムはこの「御魂の託宣」で、被害者が見たものが動画で流されます。
その中から、巫女や検察の主張との食い違いを見つけます。
おもいっきりオカルトな内容ですが、そもそも逆転裁判1は霊媒師がパートナーでしたから、そこに回帰したと言えるでしょうか。
また、逆転裁判は元々、冒頭に犯行シーンが流れる刑事コロンボ的な構成なので、そこに直接ツッ込みを入れる形にしたとも言えます。
ただ、この新システム以外は「いつもの逆転裁判」です。
まずは「探偵パート」で事件の捜査を行い、証拠品を集め、「法廷パート」では証言の中にあるムジュンを探し出し、証拠品を突き付けて問いただします。
これまでと同様、捜査パートでは調査済みの場所や、すでに聞いた会話にチェックマークが付けられ、捜査しやすくなっています。
また、今回は法廷パートでも2度間違うと「相談する」のボタンが現れ、どの証言があやしいのかパートナーが教えてくれるようになりました。
使えない場面もありますが、これにより行き詰まりにくくなっています。
もちろんいつでもセーブ&ロード可能なので、それを繰り返しながら総当たりすることも出来ます。
今回はこれまでの主人公とシステムが総登場するため、カガク捜査やサイコロック以外にも、相手のクセを探す「みぬく」や、推理のまとめを行うカンガエルート、SF な演出で相手の感情を調べるココロスコープなど、豊富なシーンがあります。
もちろんギャグ満載の会話やアクションも魅力で、その辺も「いつもの逆転裁判」ですね。
※クライン王国の姫巫女にして今回の人気キャラ、レイファ様。
この姫様が死者が見た光景を映し出す「御魂の託宣」を行います。
クライン王国の感じは、まんまチベットやブータン。
※御魂の託宣の考証シーン。映像を使った推理問題。
死者の見た光景に間違いは無いので、それをどう解釈するかがカギになります。
ちなみに託宣の前に姫様が踊る萌えシーンが出てきます。
※正式に「科捜研の女」になった宝月茜さんによるカガク捜査、指紋照合の画面。
これまでに登場したものは一通り登場。サイコロックが出るとちょっと嬉しい。
ただ、難点という訳ではないのですが、個人的に気になるのは…
冒頭でも述べた「監督の違いによる、作風の違い」です。
全体的に過剰感があります。
キャラクターのアクが強く、オーバーアクションで、ちょっと「くどく」思えることが。
キャラが強烈でオーバーアクションなのは逆転裁判1からですが、5と6はそれがますます強めです。
設定も「弁護罪」はやり過ぎ感があり、傍聴人が「死刑!死刑!」と連呼するのはさすがに行き過ぎ。
たまに出てくるアニメやムービーシーンも「アニメ感」が強いです。
特に第1章はその傾向が強く、ゲームの顔なので気合いを入れて作られたのだと思いますが、ムービーは萌え系、過剰演出でゲームのテンポが悪化(歌いながら証言するキャラがいて、音に合わせて台詞が出るため早送りできない)、敗訴したら死ぬと繰り返し言われるなど、1~4と違う「違和感」を強く受けます。
2章以降はそこまでではないのですが、大逆転裁判のすぐ後にプレイしたため、なおさら感じましたね。
とは言え、これは好みの問題。
昨今のアニメやハデな展開が好きな人だと、こちらの方が良いかもしれません。
全体としては盛り上がる内容です。
※クライン王国のナユタ検事。相変わらず変な人しかいない。
過去に出てきた検事も何人か登場しますが、例のアウチさんをのぞき、今回は一貫してこの人がライバル。
※クライン王国だけでなく、日本の法廷もあります。全体としてメリハリのある構成。
ただ、ネタバレになるから言い辛いのですが…
2章~4章にかけて、推理モノとしてはアレな「アレ」や「ソレ」や「コレ」が続けざまに出るのがさすがに…
ところで、そろそろ衆議院選挙。
今回は野心と欲望に駆り立てられた動きが活発で、見ていて楽しいです。
※これは別売り「特別編」のワンシーン。時系列としては本編の後。
このシナリオは矢張が事件を持ち込んできて、ナルホド君が御剣検事と法廷で対決する、初代逆転裁判を彷彿とさせるファンサービス的な内容になっています。
今回「大逆転裁判 → 逆転裁判6」と連続でやったのですが、そこで感じたのは、「大逆転裁判」は旧来の監督が別の逆裁を作ろうとしていて、「逆転裁判6」は別の監督が本編らしい旧来の逆裁を作ろうとしているところ。
例えば追い詰められた時、旧来のナルホド君は「ハッタリ」でその場をしのぎながら切り抜ける方法を模索します。
その流れを逆裁6では引き継いでいるのですが、大逆転裁判ではそうした展開があまり見られません。
(一度有罪判決が出た後「最終弁論」で反論する)
ロジックとしては大逆転裁判の方が自然ですが、6の方が逆裁らしい展開。
逆裁6は冒頭の犯行シーンといった、お約束の展開も踏襲しています。
それぞれ、旧来の監督だからこそ、さらにシリーズを任された別の監督だからこそ、この作り方なのでしょうね。
ともあれ、それぞれに良さがあり、結論としては「逆転裁判は面白い」に尽きます。
シリーズの経験者には、特にお勧めしたい作品です。
シリーズ未経験者だと… 4から順番に進んだ方が良いかな。
・逆転裁判6(Android 版、Google Play へ)
・逆転裁判6(3DS 版、Amazon へ)
※Youtube 公式 PV
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