Fighting Fantasy Legends'
※「Deathtrap Dungeon Trilogy」に改名
アドベンチャー RPG ゲームブック
開発:Nomad Games(イギリス)
販売:Asmodee Digital(米 / 仏)
600 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2018/7/29
ゲームブックの超リメイク、第二集
小説でありながら、順番に読み進めていくのではなく、読者が選択した行動の文章だけを読んでいき、時にサイコロを振って罠の回避や敵との戦闘を行う、ゲームのような書籍「ゲームブック」。
1980 年代の後半に大ブームとなるも、1990 年頃には廃れてしまった、知る人ぞ知る、知らない人は全く知らない、過去のゲームの一形式です。
そんなゲームブックの作品群「ファイティング・ファンタジー」シリーズを、もはやゲームブックには見えない超リメイクでコンピューター・ショートアドベンチャーゲーム化した作品集の二作目が、スマホ / タブレットで発売されました。
「Fighting Fantasy Legends'」です。
※数度にわたる名称変更の末、2020年の春に「Deathtrap Dungeon Trilogy」に変わっています。
第一集の「Fighting Fantasy Legends」には「火吹山の魔法使い」「バルサスの要塞」「盗賊都市」の3作品が含まれていましたが、今作「Fighting Fantasy Legends'」には「死のワナの地下迷宮」「迷宮探検競技」と、日本語版が存在しなかった「Armies of Death」(死の軍隊)の3作品が含まれています。
ブックではありませんが、「死の軍隊」はこれが初の翻訳版となります。
文章は日本語化されており、翻訳におかしいところが散見されるのが残念ですが、意味が解らない程ではありません。
第一集が「Fighting Fantasy Legends」、第二集が「Fighting Fantasy Legends'」で、名前の違いが「 ' 」しかないのでご注意を。
第二集はアプリアイコン、及びタイトル画面に「PORTAL」と書かれているので、そちらも確認した方が良いでしょう。
なお、Steam 版は「Fighting Fantasy Legends Portal」、Android 版は「ファイティング・ファンタジー レジェンド ポータル」という名前で、おそらくこちらが正式タイトル名です。
価格は 600 円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
開発元は前作と同じくイギリスの Nomad Games ですが、今回は販売元がアナログゲーム系アプリの販売権を次々と取得している Asmodee Digital に代わっています。
アスモデはドイツゲームのみならず、ゲームブックやウォーゲームにも手を伸ばしていて、この方面を制覇しそうな勢いです…
ゲームブックは小説ですから、文章を読みながら進めていくのですが、このアプリはダンジョンや町の風景が画面に直に描かれていて、進む方向もボタンで選択します。
状況を説明する文章の多くは省略されており、次に読むべきパラグラフ(段落)の指示もありません。
よって展開はゲームブックを再現していますが、プレイ感や見た目には、あまりゲームブックらしさはありません。
そのためゲームブックそのままを期待している人だと、拍子抜けするかもしれません。
一方、ゲームブックを知らない人でも、普通のアドベンチャーゲームとして楽しむことができます。
前作(第一集)は「北アランシア」と呼ばれる世界を自由に移動しながら、同じ主人公で各作品の冒険に挑戦していました。
強さやアイテムを他の作品に引き継げたため、レベルアップしてから難しい作品に挑むことも可能でした。
しかし今回は続きものであるためか、3つの作品を順番にクリアしていく形式に変わっています。
主人公の強さやアイテムも引き継げず、シナリオ的には同一人物なのですが、プレイ開始時に個別にキャラクターを作ります。
本来のゲームバランスの維持が難しく、Aの作品のアイテムがBの作品にも関わるシステムは複雑すぎた、というのもあったのかもしれません。
キャラクターメイキングの際には、主人公の技術と運を決め、さらに特殊能力を1つ選択します。
技術と運は自由に設定できますが、高くするほど最大体力が減少します。
「パラディン」や「混沌の戦士」といった職業も選択できますが、これは見た目の違いでしかありません。
※キャラクターメイキング。どんなステータスが良いかは一概には言えません。
技術と運、共に 10 ぐらいが無難でしょうか。
特殊能力もどれも有用で、これがベストというのはないですね。
※ゲーム中の画面。足跡ボタンでその方向に歩いて行きます。
「?」マークはランダムイベントが起こる場所で、これはオリジナルのゲームブックにはなかった仕様。
アイテムが見つかったり、敵が出たり、トラップが発生したりします。
1度しか起きないイベントの場所が、リトライ後に?マークに変わっていたりします。
ゲームは上から見下ろした画面で進行します。
移動方向や選択肢はボタンで選べ、サクサク進められます。
敵に遭遇するとサイコロを振って戦闘を行います。
サイコロには1つだけマークが付いていて、技量が 10 なら 10 個振り、出たマークの数だけダメージを与えられます。
これをプレイヤーと敵、交互に行います。
6面ダイスでマークが1つだけなので、サイコロを 12 個振っても期待値は2。
なかなか大きなダメージは与えられません。
ただ、敵を倒すなどして経験値が貯まってレベルアップすると、1つ目のサイコロの当たりマークを1つ増やすことができます。
これにより1つ目のサイコロの当たり確率は 2/6、3/6 と増加し、さらにレベルアップすると2つ目のサイコロのマークも増えていきます。
トラップに引っかかったり、何かのトラブルが起こった時には「運」の判定を行います。
これもサイコロを運のステータスの分だけ振って、出たマークの数で判定。
レベルアップ時に運のサイコロを強化することも可能です。
戦闘やトラップによって体力が 0 になってしまうとダウンですが…
キャラクターの強さ(サイコロ)やアイテムはそのままで、体力が全快して、ダンジョンの入口(もしくはチェックポイント)から再開できます。
ダウンするごとにライフが減り、0になると完全にゲームオーバー(成長がリセット)になりますが、初期の難易度ならライフは9もあるので、かなりリトライ可能です。
成長すれば戦闘も運判定もラクになるので、徐々にクリアに近付いていけるでしょう。
と言うか、クリアに必要なアイテムは様々な場所に散りばめられていて、リトライしながら集めていくのが前提のような作りです。
※戦闘画面。サイコロがリアルにコロコロ転がります。
10 個のサイコロを転がせば、最大で 10 ダメージが出る可能性があり、一気に6ダメージとか受ける場合もあるので、運に左右されやすいのは確かです。
え? 魔法の指?(インチキ) そんなものありません。
アプリを落としてタスクからも消し、再度アプリを起動するとか、そんなことしてはいけません。
※そしてレベルアップ、サイコロアップグレード。
経験値は戦闘だけでなく、イベントやトラップ回避でも得られます。
育成があるおかげで、モンスターやトラップに遭遇しても、経験値を稼げると思えるのが良いです。
前述したように今作は3つの作品を順番にクリアしていきます。
最初の「デストラップ・死の罠ダンジョン」(死のワナの地下迷宮)は、町の催し物として公開されているトラップだらけの死のダンジョンに挑むというもの。
どんな催し物だよ、男塾かよ、とか思いますが、ゲーム自体は単なるダンジョンもので、目立ったストーリー展開はなく、美少女と出会ったりすることもなく、やや面白味に欠けます。
ただ、このシリーズの原点である「火吹山の魔法使い」がダンジョン探索もので、その原点に戻ったような作品であり、ゲームブックらしいとは言えます。
そして2番目の「チャンピオンのトライアル」(迷宮探検競技)は… その上級編。
最初のダンジョンが突破されたので、もっと難しいダンジョンが作られた、という設定なのですが、正直ヒドい。
相変わらずダンジョンを探索するだけなので目立った展開はなく、それでいて理不尽に難しくなっていて、即死トラップてんこ盛り。
それでもこのアプリの場合、アプリ自体のデキが良いのでショートアドベンチャーとして楽しめますが、ゲームブックとして考えた場合、ハッキリ言ってクソゲーブックです。
しかし3番目の「死の軍隊」は… ゲームブックとして非常に良いです。
アランシアの各地を巡って軍勢を整え、リーダーとしてそれを率いて陸路や船で進軍、途中で町や洞窟を探検し、最後には悪魔の軍団と合戦をするという、起伏のある物語になっています。
システム自体も無理な謎がなく、再開ポイントも用意されているなど、遊びやすい作り。
難点は、他の2作をクリアしないと遊べないことぐらいですね。
※アイテム画面。2本目のチャンピオンのトライアルはこの「金の指輪」をたくさん集めないといけないのですが、無駄使いさせようとするトラップがある上にいくつ必要かも解らず、足りなかったら問答無用で死亡するというヒドい作り。
数を言ってしまうと、9つ必要です。
※今作にもフィールド移動シーンがありますが、1本目と2本目ではちょこっと出てくるだけ。
3本目の「死の軍隊」で本格的に歩き回れるようになります。
※「死の軍隊」で訪れるゼンギスの街。
桜が咲き、提灯が灯るアジアっぽい風景で、BGM もオリエンタル。
このシナリオは旅をしている感があって良いです。
正式なタイトル名に Portal(入口)と付いているので、メーカーはこちらの方をシリーズ初心者向けと考えているのかもしれません。
だからオーソドックスなダンジョン探索モノを2つ含むこの連作を採用し、システムも1作ずつクリアしていくゲームブックらしい形に改めたのかもしれません。
ただ、2本目の「チャンピオンのトライアル」がアレなので…
ポータルに相応しいと言えるのかどうかは微妙ですが。
しかしこうしてゲームブックの復刻… と言うか現代型リメイクが続き、日本語にも対応しているのは、ゲームブックを知る者として嬉しい限りです。
海外ではメインシリーズだけで 59 作品も刊行されており、もっと色々やってみたい作品群。
今後も続いて欲しいシリーズですね。
原作を知らない方でも「豪華な RPG 仕立ての脱出ゲーム」という感じで楽しめるアプリです。
Fighting Fantasy Legends' (iOS 版)
・ファイティング・ファンタジー レジェンド ポータル (Android 版)
・Fighting Fantasy Legends Portal (Steam 版)
※Youtube 公式 PV
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テキストアドベンチャー / ゲームブック