Flower
インタラクティブ・アート
開発 / 原作:thatgamecompany(米)
開発 / 権利:SCE Santa Monica Studio(米)
開発 / 移植:Annapurna Interactive(米)
価格 600 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2017/9/30
千の風になる PS のアートゲームが iOS に
プレイヤーは一陣の風。
花を咲かせ、その花びらを舞い上げながら、美しい野原を吹き渡る、PS シリーズで評判だったビジュアルと癒やしのゲームが iOS に移植されました。
「Flower」です。
なお、日本の PS3 / 4 / Vita 版は商標の関係で「Flowery」という名前になっていましたが、iOS 版は海外版と同じ「Flower」です。
時間制限やミスがなく、美しい風景を飛び回ることを楽しむ内容なので、どちらかと言うと「インタラクティブ・アート」(参加型芸術)であり、ゲームとして面白いといった類いのものではありません。
しかしそのビジュアルはとても素晴らしく、現代美術として博物館に収蔵されるのもわかる芸術的な作品です。
このゲームは 2009 年に PS3 のダウンロード用ソフトとして公開され、2014 年に PS4 & PS Vita でも公開された、PS シリーズの技術アピールを感じるソフトでした。
それがこうして iOS でも公開されたのは、正直、驚きですね。
価格は 600 円。買い切りゲームなので課金・スタミナ・広告等はありません。
原作を作ったのはアメリカの thatgamecompany というメーカーで、ここは「風ノ旅ビト」、さらに Apple の発表会でも取り上げられた開発中の iOS 用 新作ゲーム「Sky」で知られるメーカーです。
ゲームの版権はまだ SCE(ソニー、プレステのゲーム部門)にあるようで、移植は Annapurna という新興メーカーが担当。
昨今、ソニーが PS のタイトルを利用したスマホゲームの開発を進めており、先日 みんゴル が公開されましたが、その流れの1つなのかもしれません。
野原に咲く一輪の花をタップすると、そこから花びらが舞い上がります。
画面を押し続けると風が吹き、花びらを乗せて吹き抜けていきます。
この風となって、広いフィールドを飛び回ります。
飛んでいく方向は、本体を傾けて操作します。
こうしたティルト(傾き)操作のゲームは、寝転がって出来ないので好きではないのですが、この作品はスピード感のある「風」となり、空を飛び回るゲームなので、このティルト操作がマッチしています。
フィールドには花のつぼみが並んでいて、そこを通ると花が咲きます。
花を咲かせていくことで枯れた草原が蒼く生い茂り、岩場が草木に包まれるなどの「緑化」が起こります。
そして道を塞いでいた岩が崩れたり、新しい花のつぼみが現れるといった変化が生じ、これを繰り返しながらゴールへと向かっていきます。
前述したように、ミスや時間制限はありません。
ステージによっては先に進む方法が解り辛い場合もありますが、それでタイムオーバーになってリトライ、みたいなことはないので、ノンビリ花を探して飛び回れます。
後半は触れると弾き飛ばされる電線なども現れますが、それでミスになることはありません。
※草むらをかき分けて進む風。このように花が一列に並んでいる場合が多いので、それに沿って飛んでいけば OK。
それにしても、草1本1本の表現がすごいです。
※草原の花々を咲かせることで、岩山が切り開かれる…
先に進めない場合はとりあえず戻り、どこかに花がないか空から見下ろしてみましょう。
※夜のステージはクリア方法がちょっと解り辛い。
ほとんどのシーンは花を咲かせていけば良いのですが、ここはそれ以外の行動をする必要があり、例えば画像のシーンはワラの山を一周します。
場面が変わる時にヒントが出るので、見逃さないようにしましょう。
各ステージには隠しフラワーが存在し、それを見つける探索要素があります。
また、ステージセレクト画面の鉢植えはクリア評価に応じて花が咲き、達成率が低いとクリアしてもしおれたままになります。
一応、フィールド探索型のアドベンチャーゲームとも言えるでしょうか。
あと、私は PS3 版で一度クリアしているのですが、内容が少し変わっていたように感じます。
PS3 版は最終シーンが厄介で、帯電した障害物に阻まれ、えらく苦戦した記憶があるのですが、iOS 版は瓦礫をぶっ壊して突き進んでいく、むしろ爽快なシーンになっています。
この作品にアクションゲーム的な難しさは必要ないということで、改められたのではないかと思います。
プレイ時間は2時間弱。スムーズに進めば1時間ほどで終わるでしょう。
ゲームとしては短いですが、アートとしてはこのぐらいで良いと思います。
短時間でも、印象に残るシーンはたくさんあります。
難点… と言うか驚いたのは、プレイ中に本体の高温警告が出たこと。
新 iPad Pro(10.5'')を使っていたのですが、こんな警告が出たのは初めてだったのでビビりました。
触ってもそれほど灼熱という訳ではなかったので、iPad Pro は早めに警告を出すのかもしれませんが、相応に負荷は高いようですね…
※夕日をバックに風車が立ち並ぶ草原。1つ1つのシーンが絵になります。
なお、右上のメニューボタンを押すと、即ステージが中断されるので注意。
※ステージセレクト画面。各ステージは部屋の住民の想像の世界なのでしょうか。
右から2番目の鉢植えが咲いていないのは、クリア評価が低かったため。
※この画面は初めて見ました… 新 iPad だから? iOS11 だから?
まあ、タブレットだもんなぁ。ギュウギュウ詰めでエアフローや CPU ファンなんて無いし。
なお、高温になったからといって、あわてて氷で冷やすようなことはしないように。
電子機器最大の敵「結露」が発生して故障の原因になります。
美しい風景をノンビリ、時にスピーディーに飛び回り、そこに楽しさを感じるアプリです。
描かれているのが自然と光の美しさなので、誰もが共感できる芸術性があります。
ゲーム的なものは期待しないで下さい。急いで攻略しようなんて考えると、魅力はなくなります。
PS3 や PS4 でグラフィックが絶賛されていたゲームが、iOS で出たことにスマホの進化を感じますね。
草原がなびいて光がうねる、その様子を見比べた感じでは、グラフィックの質は PS3 や Vita よりも上だと思います。
解像度は明らかに上位ですし。
最新スマホの美しさと、宮沢賢治的な雰囲気を体感できるビジュアル作品として、体験する価値のあるアプリです。
※Youtube 公式 PV
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