FEZ Pocket Edition
アクションアドベンチャー
Polytron(カナダ)
価格 600 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2017/12/21
「日本のゲームはクソ」の作者のゲーム
二次元の世界の住人が、世界を三次元で見る力を手に入れた時、未知の冒険が始まった。
移動は平面、世界は立体、2.5 D の人気アクション・アドベンチャーゲームがスマホ / タブレットに移植されました。
「FEZ Pocket Edition」です。
それは 2012 年3月にアメリカで開催された、インディーズゲームを題材とした映画のパネルディスカッションでの出来事でした。
ある日本人開発者が、映画のプロモーションに日本のゲームが多く登場したことについて「大変誇りに思います。最近の日本のゲームについてどう思われますか?」と発言したところ、FEZ の開発者の Phil Fish 氏はこう答えました。
「クソだな」(Your games just suck)
会場からは笑いやどよめきが起こり、そして不穏な空気に包まれ、しばらく騒然となります。
この出来事は国内外のメディアで大きく伝えられ、特に日本では FEZ のゲーム内容よりも、この話題が先行する形となりました。
ただ、全体としては否定的な意見はあまり見られなかった印象です。
なぜなら当時はグリーとモバゲー(DeNA)によるソーシャルゲーム、それも初期の「ポチポチゲー」の全盛期であり、そのガチャ商法が社会的にも問題なり始めた頃。
一方で専用ゲーム機でも、FF13 の一方通行すぎるシステムが国内外で議論を呼んでいました。
当時の「最近の日本のゲーム」について尋ねた返答としては、決して的外れとは言えなかったでしょう。
まあ、この方は他にも過激な発言が多く、トラブルを繰り返しているため、単にそういう性格なだけの気もしますが。
前置きが長くなりましたが… FEZ はその「日本のゲームはクソ」と言い放ったカナダの開発者の作品です。
2012 年のインディーズゲームの表彰(IGF)で大賞を受賞し、2013 年には 100 万本を達成した非常に評価の高いゲームです。
価格は 600 円。買い切りなので課金やスタミナ、広告等はありません。
メッセージはオプションで日本語にできますが、初期設定は(日本語環境で起動しても)英語のままなのでご注意下さい。
いわゆる「ジャンプアクションゲーム」です。
ただ、スーパーマリオのような横スクロールではありません。
多くのステージは縦長で、段差を飛び移ったり、よじ登ったりしながら世界の探険を行います。
敵はおらず、戦闘はありません。
主人公は 2D(平面)の世界の少年です。
彼らには「奥行き」は存在しません。
しかし物語の冒頭で 3D(立体)の力を手に入れ、横フリックで世界を「回転」させられるようになります。
これにより、地形の側面や裏側に回り込むことができます。
でも、彼はあくまで二次元の人であるためか、移動の際に奥行きを考慮しません。
そのため、本当は奥にある床に着地したり、ハシゴに飛び付いたりできます。
例えば、以下のような感じです。
※ハシゴが3つ並んでいる。しかしそれぞれの位置は離れている。
これでは上まで登れないが…
※視点を回転させて横から見ると、3つのハシゴが繋がっているように見える。
繋がっているように見えるのであれば、奥行きのない彼にとっては、実際に繋がっている。
このままハシゴを登って上まで行くことができる。
視点の回転を使って、まるで錯視トリックのような移動を行うことができます。
一見離れていても、視点を変えれば近くになったりします。
これを活用して先に進む道を見つけて行きます。
もし誤って落下しても、デメリットなしで直前から再開できます。
シーンによってはジャンプの細かい操作が必要で、タッチパネルであるため操作性が気になることもありますが、オートセーブはかなり頻繁に行われ、ミスってもほぼその場から復帰できます。
おかげでほとんどストレスにはなりません。
ゲームの目標は世界に散らばっている「キューブ」と呼ばれる立方体を集めること。
キューブには大きいものと小さいものがあり、小キューブは8つで大キューブ1つ分になります。
世界は広く、複雑に絡み合っていますが、自由に行き来できます。
各所に豊富な仕掛けがあり、謎解きアクションと言えますね。
※取っ手でナットを固定して、画面を回転させることで上下に移動できるしかけ。
回転を利用したユニークなしかけが豊富に登場します。
※鉱山風の洞窟で爆弾を発見。
爆弾や箱はハンドボタンで持つことができます。
箱は足場にする以外に、スイッチを押すなど、様々な使い道があります。
※ゲームが進むとワールドマップを確認できるようになります。
各エリアの繋がりだけでなく、未回収のキューブや謎がどこにあるかも確認可能。
アイテム回収済みのエリアは金色に変わります。
森のような世界が多いのですが、場所によっては薄暗い遺跡、廃墟の街、雨の降る神殿なども登場します。
キャラクターが可愛らしく、気味が悪い訳ではないのですが、正体不明の世界を彷徨う様子には得も言えぬ不気味さもあります。
こういうゲームはカルト的な人気を持つため、それも高評価に影響している気がします。
キューブは扉を開くカギにもなっていて、集めることで新たなエリアに向かうことができます。
とりあえず、16個の大キューブが必要な扉を開くのが最初の目標でしょう。
世界の各所には「謎」(シークレット)も隠されています。
例えば、鐘を特定の回数鳴らしたり、背景のヒントを元にコマンド(キー操作)を入力したり…
場所によっては QR コードを読み込む時も。
そうした謎を解明すると、紫の「アンチキューブ」を得ることができます。
これもキューブの代わりになり、手に入れれば通常のキューブをいくつか見逃してもオールクリア可能になります。
難点は、暗号はアルファベットなので、日本人だと解読困難なことでしょうか…
まあ、アンチキューブは無理に手に入れなくてもクリアできますが。
※ちょっと不気味な墓の世界。
ここにある彫像はバラバラの方向を向いていますが、ハンドボタンで掴んで地形を回転させ、すべて同じ方向に向けると…
※とある部屋でアンチキューブゲット。見つけるとクリアがラクになります。
この部屋は背景の絵の帽子の位置がヒント。
ただ、アンチキューブの発見は必須ではないし、特定のアイテムがないと見つからない場合もあるので、よく解らない時は気にせず進みましょう。
※紫の滝の流れる大扉のあるエリア。
ここの扉はキューブをたくさん集めていないと開かない。
この先に行くのが目標となります。
こういう言い方は何ですが… 大言を吐くだけのクオリティーを持つ作品です。
細かいところまで丁寧に作られたゲームで、各シーンのバランス調整もしっかり行われている印象。
演出や雰囲気も良く、素晴らしい完成度ですね。
戦闘のない探索アドベンチャーであるため、やや淡々とした展開で、盛り上がりに欠けるところもありますが、シーンが豊富で飽きの来ない探索を続けられます。
ボリュームも十分で、お勧めできるアプリです。
※Youtube 公式 PV
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