言な絶えそね -行田創生RPG-
RPG
有限会社井桁屋 / 埼玉県行田市役所(日本)
無料
レビュー公開:2018/2/27
市役所の企画政策課が本気出した RPG
埼玉県行田市。
自然と歴史ロマンにあふれた、地場産業で栄える都市。 …らしい。
行ったことないから知らないけど。
そんな埼玉県行田市が、驚くほど本格的に作られた長編和風ファンタジー RPG になっている、地域振興アプリを公開しています。
「言な絶えそね -行田創生RPG-」です。
タイトルは「ことなたえそね」と読みます。
地方自治体が公開している PR 用アプリは、スマホでは珍しくありません。
ゲームを盛り込んでいるものも、すでにいくつかあります。
しかしそのほとんどは観光 PR に若干のお遊びを加えた程度のもので、ゲームとしては楽しめないものが大半です。
しかしこのアプリは違う。
すごくしっかり作られている和風 RPG で、ストーリーなども本格的、キャラクターにも魅力があり、メインキャラのセリフはフルボイス。
むしろ「地域振興アプリなんだ」と言われないとそれに気付かないレベル。
フィールドの見た目には「RPG ツクール」感が漂いますが、戦闘バランスはドラクエライクで、やり応えのある冒険を楽しめます。
そんな本格派の RPG に、無理のない形で地元 PR が加えられていて、押し付け感がないところも良い点ですね。
行政関連のアプリなので価格は無料。
課金やスタミナ、ガチャなどもありません。強制広告もなし。
完全にタダで、最後まで自由に遊べます。
時は戦国時代。武蔵の国、忍城(おしじょう)の城下町に住む鍛冶屋の青年が、古代の衣装をまとった少女と出会い、さらに正体不明の「妖魔」に襲われるところから物語はスタートします。
舞台となっている行田市は、映画「のぼうの城」や、女武将「甲斐姫」などで戦国ファンには相応に有名ですが、古墳が多くあり、鉄剣などが出土している古代史研究の要地でもあって、ストーリーはそれらを盛り込んだものになっています。
フィールドやダンジョンを移動していると突発的にモンスターが現れ、ターン制のコマンドバトルで戦う、オーソドックスなドラクエ型の RPG。
ゲームバランスもドラクエ的で、レベルアップと装備の買い換えによるしっかりした育成が必要です。
ストーリーを追っていれば自然と強くなれるファイナルファンタジーのようなタイプではないので、苦戦するなら経験値稼ぎが必要。
また、負けたらゲームオーバーで、セーブしたところからやり直しになるので、無理は禁物。
やや古風でシビアなバランスですね。
しかし前回のコマンドを繰り返してくれる「スキップ」のボタンがあり、戦闘の進行を3倍速にすることもできるので、バトルは割とサクサク進みます。
フィールドの各所にはダンジョンがあり、メインストーリーとは無関係な、サブクエスト用のボスがいる場所も。
サブクエストを達成するとキャラクターに付加できる「アビリティー」を得ることができ、その活用も攻略のポイントになります。
※フィールドとメニュー画面。ダイヤ型のボタンが特徴。
ヒロインは絵に描いたようなツンデレ。
パーティーが3人になったら、少しレベル上げをした方が良いです。
東の森に行くように言われますが、東の川沿いにサブクエストのボスがいるので、それを倒してから森に入った方が無難かもしれません。
セーブできるのはほぼ町のみ、全滅でゲームオーバーなので、慎重に進めた方が良いです。
アビリティは獲得しても「装備」で身に付けないと効果がないので注意。
※左が主人公、鍛冶屋の銀古(ギンコ)。蟲は見えない。
右は忍城で「のぼう」こと成田氏長と話す、甲斐姫。史実の人。
忍城は豊臣秀吉による北条攻めの際、石田三成の水攻めを受けて窮地に陥りましたが、氏長や甲斐姫の活躍もあって持ち堪え、逆に落とせなかった三成が対立する武断派の武将から「プギャー!」されたことで知られています。
ただ、このゲームは歴史ゲームではないので、合戦などは出てきません。
どちらかと言うと「ストーリーで引っ張る RPG」であり、先の気になる物語が続きます。
ストーリーに無理やりな観光 PR 感はなく、普通に純和風ファンタジー。
調べると「あぁ、アレはこの地元ネタにちなんでいたんだな」というのが解ったりしますが、自然な形で盛り込まれています。
前述したようにメインキャラのセリフはすべてフルボイスで、その辺の作りは本当に本格派。
ただ RPG として気になったのは、ストーリーの都合でパーティーメンバーが頻繁に変わること。
前述したようにレベルアップと装備が大切なドラクエ型の RPG ですが、レベルを上げたキャラがパーティーから急に外れ、別のキャラが入ってきて、そのキャラを育成しても強くなった頃にまた抜ける… みたいなことが続きます。
このゲームをやると、「あぁ、FF の育成感が薄いのは、パーティーメンバーが替わることの影響の緩和もあったのかな…」とか思います。
もう1つ気になったのは、セーブの仕様。
良くも悪くも専用ゲーム機の RPG のような作りで、セーブできるのは村や休憩場所にある「社」のみ。
おかげでダンジョンやボス戦に緊張感があるのですが、スマホアプリは急に中断しないといけないことも多いので、不便感もあります。
どこでもセーブやオートセーブのような仕様はありません。
私的には、いつでもやり直せる RPG もどうかと思うので、これはこれで嫌いではないですが…
※一応、地域振興のアプリなので、ゲーム内で協賛店のクーポン券を貰えたりします。
右は「きねや足袋」のお店。ドラマ「陸王」のモデルとして有名。
他にも埼玉りそな銀行など、舞台は戦国時代ですが、実在の名前のお店が登場します。
なお行田村の銀行は、左から5千、5万、15万 のお金を預けると役立つモノを貰えます。
※観光 PR アプリなので、GPS 機能を使った観光案内もあります。
ただ、ゲームはゲームで進行し、無理やり案内が表示されるようなことはありません。
関連シーンで、任意に案内を表示できるボタンぐらいはあっても良かったと思うけど。
このゲームを作った井桁屋という会社は、過去にも埼玉県を舞台にした RPG(ローカルディア・クロニクル)を作っていて、今作が地元 PR 用 RPG の第二弾になるようです。
どちらも手作り感はありますが、公共団体のアプリとしては突出した内容です。
これで完全にタダ、強制広告もなしというのは、そこいらのインディーズ作品が涙目になりそうなほど。
私的には、久々にやった古風な RPG なので、その面白さを再確認できました。
RPG が好きな方には、かなりお勧めのアプリです。
Tweet |
- ローカルディア・クロニクル(App Store へ)
- 魔女の泉3
- RPGolf
- 心鎧リコレクト
- 不思議の国の冒険酒場
- 不思議の国の鍛冶屋2
- ヒュプノノーツ
- 創世のエル(2018/2 現在、非公開)