From_.
アドベンチャー
Serina Nakajima(日本、個人)
価格 360 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2017/11/14
古くて退屈で単調な、やさしい世界
ずっとずっと昔、コンピューターゲームがまだ黎明期だった頃の雰囲気を持つ、青一色の粗いドットで描かれたアドベンチャーゲームが登場しています。
「From_.」です。
1980 年代初頭のパソコンゲームを思わせる画面は、見ての通り独特。
大半の人は見た瞬間に興味を失い、そして一部のレゲーファンだけは強烈に引き付けるグラフィックですね。
私は引き付けられる人種なので、注目していました。
この画面がピアノソロの BGM と相まって、哀愁の漂う雰囲気を醸し出しており、そこは確かに秀逸と言えます。
しかし画面と同様、ゲーム内容は非常にシンプル。
残念ながら「こんな見た目なのに内容はスゲー!」的なものではないです。
ボリュームも、シナリオも、演出も、特筆すべき所はありません。
むしろ、それを狙っているのかもしれませんが…
価格は 360 円。買い切りゲームなのでスタミナや広告はありません。
正直、有料ならもうちょっと… ってのも本音です。
いや、広告ゲーだったら雰囲気ぶち壊しですけどね。
そこはみなもに浮かぶ「水の国」。
今日も郵便屋さんが小舟に乗って、手紙を届けて回ります。
主人公はこの郵便屋さん。
移動は左右のみ。
この町には7つの建物と両岸しかありません。
舞台はほぼ、これで全て。
人のいる場所に行き、会話をすることで話が進みます。
どこに誰がいるかは話の内容でわかり、持ち物画面を開くと、そこにヒントも書かれています。
よって悩むことはありません。
ある程度進めると「家に帰ろう」と主人公が言うので、自宅に戻って休みます。
ゲームはただ、これだけ。
言われるままに、頼まれるままに、会話をして、手紙を届けます。
※乗船時は画面の端を長押しで移動、船から下りたら行きたい場所か、話す相手をタップ。
操作はそれだけ。右上のバッグボタンで持ち物とヒントを確認します。
謎解き要素はありません。
画面はいかにも古いのですが、ピアノの BGM は美しい音色で、ピコピコ音ではありません。
そのギャップが良い雰囲気を出しています。
ただ、ストーリーに起伏がなく、淡々と進みます。
物語性がない訳ではありませんが、特に感銘は受けません。
また、移動に時間がかかるため、テンポが良くありません。
しかも画面が切り替わるごとに指を押し直す必要があり、押しっぱなしで移動し続けることができないので、同じ所の往復なのに画面は見ておく必要があります。
ハッキリ言って、退屈です。
正直、雰囲気以外に特筆したくなる部分はないですね…
※隠り江に、思ふ心をいかでかは、舟さす棹の、さして知るべき。
雰囲気は確かに良いのですが、ひたすら同じ場所を往復することのめんどくささが感傷を損ねていて、やらされてる感も強い印象です。
まあ、これで移動がめんどくさくなかったら、すぐ終わってしまうのですが…
完全なる「雰囲気ゲー」なので、人にお勧めはできません。
しかしこのゲームは、進行や物語も含め、あえてこうしたアンニュイな作風なのかもしれません。
これは私がレゲー好きだからかもしれませんが、雰囲気作りという点では、確かに成功していると思います。
ただ、もっと深みがあって、移動が面倒でなければ良かったのですが。
なんと言いますか、侘び・寂びを求めている方向けの作品ですね。
・From_.(Android 版、Google Play へ)
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