Gorogoa
インタラクティブアート アドベンチャーゲーム
開発:Jason Roberts / Buried Signal (アメリカ)
販売:Annapurna Interactive (アメリカ)
価格 600 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2018/2/12
ゲームという体裁のインタラクティブ絵本
少年が見かけた奇妙な生き物。辞典には、それに捧げ物をする人々が描かれている。
興味を持った少年は、捧げ物を探す旅に出た。
それは折り重ねられた、多層世界への旅だった。
手書きによる繊細なビジュアルと、奇妙なストーリー、斬新なシステムを持つ、不思議な大人向けの電子絵本が公開されています。
「Gorogoa」です。
いかにも Apple 好みの芸術的な作品。
原作者のジェイソン・ロバーツ氏は Apple や Yahoo! に在籍していたという作家さんで、いくつかの絵本や伝記を出版しています。
これはそんな彼がゲームというメディアを利用して作り上げた、電子絵本と言える作品です。
よってゲームと言うよりインタラクティブ・アート(参加型芸術)。
ただ、プレイ感としては脱出系のような謎解きゲームであり、中盤以降はなかなか手強い謎が待ち受けています。
昨年末に発売された作品で、PC(Steam)版もありますが、電子絵本ですから iPad でのプレイが一番合ってますね。
先日 Nintendo Switch 版も公開されました。
価格は 600 円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
販売は Flower も担当していた Annapurna が行っています。
まずは町中を奇妙な生物が歩く、1枚の動画が現れます。
動画が止まると、ボタンでそれをズームアウトすることができます。
すると窓からそれを見ている少年が現れます。
少年は辞書で生物のことを調べ始めます。
辞書のページをタップすると、そこにズームイン。
辞書の内容を調べて元の画面に戻ると、画面が4分割され、絵を動かせるようになります。
そして最初の絵を動かすと、全体が動くのではなく、「窓枠だけが」外れます。
この窓枠を適当なところに置いてタップすると、絵が動いて物置にいる少年の姿が映し出されます。
窓枠を取った元の画像を動かそうとすると、今度は扉のある町の風景が外れ、その奥から草むらの中の建物が現れます。
扉のある町の風景を物置の少年の絵に重ねると、少年が扉をくぐり、その町の絵に方に移動。
さらにそれを草むらの絵に重ねれば、草むらのシーンへも移動させられます。
こうして絵を外し、動かし、少年を別の絵に移動させながら、物語を進めていきます。
動画を並べ替えて正解を探す点は FLAMED に似ています。
しかしこのゲームはもっと複雑で、先に進むと複数の絵を上下左右に並べたり、重ね合わせる順番を工夫しなければならないこともあります。
絵をタップするとズームできる場所が光って教えてくれますが、どのズームのシーンをどの絵に組み合わせれば良いのか、どのシーンなら絵を分離できるのか、試行錯誤が必要。
序盤はサクサク進むのですが、中盤からはちゃんと考えないと、なかなか手順を見つけられません。
総当たりで試そうとするより、推測しながらプレイした方が、結果的に早く進められるでしょう。
このように、かなり「謎解きゲーム」感が強く、単なる雰囲気ゲーという訳ではありません。
※夜空の星に、中の空いたランプを重ねると灯りが点く。
穴あきしかけ絵本を、そのまま謎解きゲームに応用したような作品です。
※絵を上下に並べると繋がるしかけ。
ここは箱から石が落ちてきて、それが下に転がっていく前に並べ替える、スピードが必要なシーンです。
しかしこのゲームの最大の魅力と特徴は、その雰囲気とビジュアルでしょう。
作者が1枚1枚、手書きで丁寧に書き上げたイラストには素朴な良さがあります。
一方でストーリーは不可思議で、正直、全体像はハッキリしません。
ただ、バラバラという訳ではなく、繋がりがあるのは感じられます。
文字やセリフが一切出てこないゲームなので、言語の問題はありません。
クリアまでの時間は、謎で悩んでいる時間を含めても2時間ほど。
しかし終わった時には「謎の感動」と、満足感を得られることでしょう。
鬱ゲーではないので、後味が悪いといったことはありません。
ショートストーリーと言え、ストレートに進んでしまうとアッサリ終わってしまいます。
ですからこのゲームは謎が解らなくても、できるだけ解答を調べたりしないのをお勧めします。
※少年だけでなく、戦災者、書斎の男、街に住む人など、様々な人物が現れます。
彼らは共通して謎の生物を追っているようですが…
※巡礼者と遺跡のシーン。ここは絵が多すぎて難しい。
ヒントを言ってしまうと、砂漠、森、山の順に処理していきます。
今までになかった表現とシステムの作品で、ショートストーリーの雰囲気ゲーに 600 円というのは払い辛いと思いますが、十分にその価値のある内容だと思います。
ちなみに Steam や Switch 版は 1500 円なので、iOS 版が一番お得です。
絵本と言っても子供向けではないし、謎解きゲームなので本とは違いますが、数あるデジタル絵本を志すアプリの中で、現時点でもっとも優れた作品ではないでしょうか。
・Gorogoa(PC版、Steam へ)
・Gorogoa(Nintendo Switch、DL 版)
※Youtube 公式 PV
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