- ヴァルキリープロファイル
VALKYRIE PROFILE
スクウェア・エニックス(日本)
価格 2200 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2018/3/27
北欧神話の勇者スカウト RPG がスマホに登場
北欧神話。
9つの世界が世界樹ユグドラシルに支えられていたが、神々と巨人が壮絶な最終戦争「ラグナロク」を引き起こし、世界樹は焼失、全てが海中に没して滅亡する物語。
そんな北欧神話をベースに、人間の勇者を神の尖兵とするべく活動する戦乙女「ヴァルキリー」を主人公とした、1999 年発売のゲーム「ヴァルキリープロファイル」。
そのスマホ移植版が登場しています。
「ヴァルキリープロファイル VALKYRIE PROFILE」です。
スクウェアと合併する前のエニックスの作品で、開発はトライエース。
今作と「スターオーシャン」シリーズで知られている開発会社です。
オリジナルは PS(PlayStation 1)で発売されており、時期としては FF8 と FF9 の間、ドラクエは7の前の頃。
世界観を重視したシステムとストーリー、数々の人間ドラマが描かれる群像劇、移動シーンは横スクロールのジャンプアクション。
それなのに戦闘はターン制のバトルで、ボタンを押すタイミングが重要になっており、そしてマルチエンディングと周回プレイ前提のシナリオを持つ…
おかげで奥深いゲームになっている一方で、用語もルールも解り辛く、妙にテクニックが必要なアクションシーンがやり辛く、全体的にテンポも悪いなど、取っ付き辛い作品であることも否めません。
正直、マニア向けです。
ただ、有名タイトルの移植だけあって、スマホでもかなり注目されているアプリですね。
価格は 2200 円。買い切りゲームなのでスタミナや広告はありません。
「経験値が3倍」「バトル後に自動回復」などのプレイ支援課金がありますが、必須ではありません。
スマホ版は 2006 年に発売の、ムービーシーンが追加された PSP 版「ヴァルキリープロファイル -レナス-」をベースとしています。
それにスマホに合わせた高解像度のキャラグラフィックと、どこでもセーブ、オートバトル、課金要素を追加し、操作をタッチパネルに合わせて改修したものです。
なお、私はオリジナル(PS版)、レナス(PSP版)、共に未プレイです。
よってこの記事は「思い出補正がまったくないレビュー」になります。
その点をまずご了承下さい。
まずはチュートリアルである Chapter 0(0章)が始まります。
この0章だけでも結構長く、ゲームシステムについての様々な解説が入ります。
しかしすごく複雑で専門用語も出まくりの内容を、短期間で詰め込むように説明してくるので、さっぱり解りません。
当初は面白さをまったく理解できず、早々に投げそうになりました。
なにをやっているのか解らないゲームほどつまらないものはありませんからね…
(しかも最初のダンジョンがいきなり複雑)
2章ほど進めて、改めて最初のダンジョンに戻り、それから説明を見れば大まかに理解できるのですが、この辺の解り辛さが最初の難点です。
さて、0章が終わり本編に入ると、主人公のヴァルキリーが空を飛んでいます。
ドラゴンボールの如く、いきなり空をビュンビュン飛び回れます。(ただし操作にはクセがある)
そして画面上部にある顔のボタン(精神集中)をタップすると、死に瀕した人間の声を聞くことができます。
ヴァルキリーは死んだ戦士の魂を天界に連れて行くのが役目であり、これによって次に行くべき場所が解ります。
そこに向かうと、仲間になる人間のイベントシーンが始まります。
しかしこのイベントシーンでは、特に何もできません。ただ見るだけ。
イベントと言うより「ドットキャラ劇場」で、その人物がどういう経緯で死んだのかが描かれます。
戦いで死ぬキャラもいますが、バトルシーンになったりはしません。
ただ、このゲームは多くの登場人物を描く群像劇であり、このシーンでキャラの魅力を表現していると言えます。
また、細かい動きを見せるドット劇場は、ドット絵の最盛期を偲ばせるものであり、ドット絵ファンなら必見でしょう。
※フィールド移動シーン。でも操縦桿的操作(スティックを上に倒すと下に向き、下に倒すと上に向く。ボタンで前進)なうえに飛行速度が速すぎて、思うように飛びにくい。
ここではバトルは発生せず、ただ移動するのみです。
そんなにビュンビュン飛べるんなら、アクションシーンでも飛んでくれよ… とツッ込むのはタブーなのか…?
※ベタな死亡フラグを盛大に打ち立てるラウリィ。
顔グラフィックはスマホに合わせて描き直されているようですが、古い劇画風の絵柄には抵抗がある人も多いかも…
ルネサンス期の宗教画のような雰囲気を出そうとしているのだと思いますが…
ドット絵は、背景もキャラも丁寧に書き込まれていて、しかもよく動きます。
※仲間が増えたら、そのキャラの実家などにもう一度立ち寄ってみましょう。
強力な装備が手に入ることが多いです。
特にこの魔術師用装備「護身刀 竜仙」は強力。
仲間が増えた後、再び「精神集中」をすると、大抵はダンジョンが見つかります。
このゲームのダンジョンの多くは前後のストーリーとは無関係で、例えば「恋人がさらわれたから洞窟に助けに行く」みたいな展開は基本的に起こりません。
ダンジョン内の移動は真横視点のアクションゲームになっていて、ボタンでジャンプしたり、剣を振ります。
また、「晶石」のボタンを押すと弾が発射され、当たった場所に結晶のようなものが作られます。
これを足場にして高いところに飛び移ったりできます。
物を押す、つかんで引く、スライディングなどの動作も可能。
しかし操作性はお世辞にも良いとは言えません。
元から操作にかなりのクセがあり、それがタッチパネルによって増幅されています。
反転時にいちいち滑るし、ダッシュジャンプもやり辛い。
それなのにギリギリで飛ばないと取れない宝箱があったりする。
レバーがナナメに入ってハシゴから落ちることも間々あります。
ただ、アクションゲームではないので、ミスって落ちても死んだりしないのはまだ救いです。
(若干のダメージを受けるシーンはある)
おまけにダンジョンの構造が解り辛く、画面の端が出入口なのか壁なのか判別し辛い。
マップがあるのでそれを見ながら進めば良いのですが、マップの操作にもまたクセがある。
慣れるまでは(慣れても)ストレスが貯まりますね。
※説明がなくて非常に解り辛いのですが、しゃがんで晶石を発射すると「その場に」結晶を発生させます。
これに乗って高台に飛び移ることが可能。
最初のダンジョン(難易度ノーマル)はこれを使って、上記の場所から右上に飛び乗り、その奥に行かないとボスの場所に到達できません。
なお、しゃがんでジャンプボタンを押すとスライディングできます。
※マップ画面。オートマッピング形式で、移動した場所が自動で書き込まれていきます。
最初から全ての地形が解るわけではありません。
3D でカッコイイですが、これも慣れないと操作し辛いのが難。
※ボスを倒した後はダンジョンから脱出しなければなりません。
最初のダンジョンだと入口まで戻らないといけないのですが、外に出るにはそこから壁に晶石を撃ってその上に飛び乗る、というのを繰り返し、垂直の壁面を登っていく必要があります。
チュートリアルで、ノーヒントで、初心者にいきなりコレは解り辛すぎるわ…
戦闘はターン制で、ボタンを押すだけで攻撃できるシステム。
既存のスマホアプリでは ブレイブフロンティア に似ていて、3人の仲間のボタンを連続でタップすれば、3人が一斉に攻撃を行います。
ただ、細かいテクニックがあって、これまた非常に解り辛い。
箇条書きにすると以下になります。
- 攻撃の種類と回数は武器で決まる。魔法や吹っ飛ばし攻撃もある。
- 連続で攻撃して1発目がガードされた場合、続く攻撃もガードされる。
- ただし3発ほど連続でガードさせるとガードブレイクになる。
- 相手が食らいモーションの時は無条件でヒットする。
- 連続で攻撃を当てるとゲージが貯まり、ゲージ最大で必殺技(決め技)モードになる。
- 必殺技モードで多段ヒットの技を素早く出せば、さらに連続して必殺技を出せる。
- 魔法や必殺技を使うと CT が増える。CT はターンごとに減り、0 になるまで魔法や必殺技は使用不可。
- 吹っ飛び中の相手に攻撃が当たると空中コンボになり、経験値が増える結晶(魔晶石)が出てくる。
- ダウン中の相手を攻撃するとダウン攻撃となり、CT が下がる光る玉(紫炎石)が出る。
攻撃によってモーションが違うため、連続攻撃やダウン攻撃をしたい場合は、タイミングを見計らう必要があります。
また、連続攻撃の時は1発目の命中率が重要で、命中率の高いキャラで初撃、攻撃力の高いキャラで追撃というのも基本です。
解ってしまえばそこまで難しい訳ではないのですが…
スタートして間もないうちにゴチャゴチャとテクニックや戦法を交えてチュートリアルで一気に語られるので、解らないまま進めてしまいがち。
HP は「DME」、回復薬はエリクサー、状態治療薬はバニッシュ、復活薬はユニオン・プラムという名前で、これらもエリクサー以外はパッ見では解り辛く、道具はショップで買うのではなく「マテリアライズポイント」というポイントで生成、装備もノーマル品はポイントで作るシステム。
要するにマテリアなんちゃらがお金、生成は購入なのですが、最初は用語が解らなくて戸惑いがち。
不要なアイテムは別のアイテムに変換できるのですが、その名前も「原子配列変換」という H2O 的な名前で、雰囲気を出すためなんだろうけど最初は何のことやら。
とにかく雰囲気優先で、解りやすさは二の次です。
また、通常攻撃はサクサク出せるのですが、全体魔法や回復魔法を使う時は、Menu ボタン → 魔法ボタン → 使用者選択 → 魔法選択 → 使用(決定)ボタン → 対象選択で使用ボタン、と6ステップも必要で、むしろ面倒。
Auto にしても倍速になったりする訳ではなく、テンポも良くありません。
※魔法で打ち上げた敵を一斉攻撃し、空中コンボで経験値アップを狙っているところ。
ただし魔法によっては敵が浮き過ぎるので、着地を狙わないと空振りになります。
魔法攻撃はガードされないのも利点。
序盤の浮かせ攻撃は「宝剣グリム・ガウディ」を装備したヴァルキリーの攻撃もお勧め。
※連続攻撃すると左下の緑のゲージが貯まっていき、100 になるといきなり英文が表示されて必殺技(決め技)モードに。
ボヤボヤしているとゲージがどんどん減っていくので、早く必殺技を出しましょう。
ただし、すでに倒した敵に必殺技を出しても意味がなく、CT が無駄に貯まるので、相手の残り HP もよく見ておきましょう。
※道具画面。「原子配列変換」とか「はぁ?」となる。
「アイテムから別のアイテムを作る」と書かれていますが、合成や調合といった類いではなく、単に特定のアイテムを別の特定のものに変える、というだけです。
MP はマジックポイントではなく「マテリアライズポイント」という名前のお金の略称。
道具生成は生成というかショップ。 何もかもが余さず紛らわしい。
ダンジョンで戦っていると経験値が入り、ヴァルキリーや仲間がレベルアップしていきます。
そしてレベルアップすると CP(キャパシティ)というポイントを得られます。
これを使って様々な戦闘スキルやステータス上昇スキルを得られるのですが、仲間の場合は「人物特性」も得られます。
これは「勇者適正値」に関わります。
前述したようにヴァルキリーは死んだ人間を天界の勇者「エインフェリア」にするために活動しているのですが、勇者は「人間として出来た人」でないとダメなため、勇敢・根性・気丈などの人物特性を高めて、勇者にふさわしい人間にしなければなりません。
ダンジョンは戦闘で仲間のレベルを上げ、それによって得られる CP で人物特性を得て、勇者適性を磨くための場であり、必ずしも最後までクリアしなければならない訳ではありません。
ただ、ダンジョンには宝箱があり、ボスもいて、ボスを打倒すれば「アーティファクト」と呼ばれる秘宝(レアアイテム)も手に入ります。
アーティファクトは天界の主「オーディン」に献上しないと評価が下がるのですが、中には強力な装備もあります。
しっかり勇者を育成して神の元に送ればアーティファクト着服による評価減は取り戻せるので、必要そうなものは貰っておきましょう。
仲間を天界に送るのは(勇者適性が必要値以上なら)「神界転送」のボタンで簡単に行えますが、送った人は戻ってきません。
よって一緒に戦うことはできなくなります。
誰を送るかは任意に選べますが、パーティーメンバーは増える端から減っていくシステムですね。
ただ、一部の仲間(最初からいるアリューゼなど)は、「送りまくって1人になっちゃった」というのを防ぐためか、転送できなくなっています。
基本的には、仲間を得る(ドットキャラ劇場)→ ダンジョンでレベル上げ → 勇者適性を上げたら転送、の繰り返しでゲームは進行していきます。
※町やダンジョンに入って出ると Period と呼ばれる時間が経過し、それによって「章」が進行していきます。
すごく焦らされるシステムですが、各章の時間には余裕があり、多少寄り道しても大丈夫。
このゲームに宿屋はなく、回復は「休息」のボタンで Period を消費して行います。
時間に余裕がない場合は魔法やアイテムで回復しましょう。
※キャラクターのステータス画面。ここの右上のボタンでスキルや人物特性を習得していきますが、やや解り辛く、自分はしばらく気付かずにプレイしてました。
キャラクターは「経験の宝珠」のボタンで「振り分け可能な経験値」を投入してもレベルアップでき、これを利用すれば仲間にしてすぐ神界に送ることもできます。
なお、「青灰色の首飾り」という装備はレベルアップ時の CP 入手量を増やすので、経験値を振り分ける場合は事前に装備させておくと良いです。
ただし神界に送る前に回収するのを忘れずに。
※神界送りにしたキャラはそれで終わりではなく、章ごとにその活躍が報告されます。
会話などのイベントはタップで内容を確認可能。
人物特性や戦術・統率などのスキルは神界での活躍に影響し、例えば「臆病」のマイナス特性が高いまま送ると、戦いで逃げ出したりします。
報告の最後に上司(フレイ)から伝えられる「いま必要な勇者」はよく覚えておくように。
スクリーンショットを撮って保存しておくのがお勧め。
※特定のイベントでは、PSP 版から追加されたスクウェアクオリティの美麗なムービーシーンが流れます。
見応えがありますが、ドットにもドットの良さがありますね。
正直「操作し辛い+システムが解り辛い+用語が解り辛い=スーパー取っ付き辛い」という印象です。
このゲームのオプション画面には電子書籍の攻略本を購入するボタンが付いていて、最初は「攻略本でも利益を出そうという商法なのか」と思っていたのですが、今は「いやコレ、攻略本を見ながらでないと遊び辛いから、電子書籍版を用意しとかざるを得なかったんだろ…」という気がしています。
もちろん今はインターネットの時代。ググればすぐに攻略サイトが見つかりますが、巷の攻略サイトは基本のプレイ方法まで面倒見てくれませんからね…
(このページでかなりフォローしたつもりではありますが)
「経験値3倍」などの支援課金も、そういうのがないと今時の人には辛いと判断された気がします。
ただ、解ってしまえば確かに楽しめるゲームです。
このゲームの主人公にはすごく「中間管理職」感があり、また(プロ野球団などの)スカウトのような印象があります。
神界戦争という名のプロリーグで戦っているチームからの要請で、要望に添った選手を探し、最低限の育成とマナー教育を行って派遣、そして定期的にその選手の活躍の報告を受けながら、次の要望に合う選手を準備する…
そんなスカウトに焦点を当てたゲームという点に、唯一無二の面白さがあります。
基本的にはオリジナルのファン向けのアプリでしょう。
ストアの評価はかなり高いですが、相応の額のアプリですし「思い出補正」込みの評価であろうと思います。
しかし最初はどうかと思いましたが、中盤に入ってシステムが理解できてくると、私も楽しくなってきました。
そして本当に面白くなるのは2周目からでしょう。
確かにファンが多いのも頷ける内容で、原作ファンはもちろん、ちょっと変わり種のスクエニ RPG を試してみたいと思っている、相応にゲーマーな方に勧められる作品です。
※Youtube 公式 PV
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