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√Letter ルートレター レビュー

√Letter ルートレター√Letter ルートレター
アドベンチャー
角川ゲームス(日本)
価格 1400 円、買い切りゲーム
レビュー公開:2018/3/21
iPhoneAndroidSteam

文通 DQN の島根紀行

島根県。
人口が日本で2番目に少なく、10月が神在月で、砂漠がありそうでなく、特産品がしじみと鷹の爪団の町。

そんな島根に降り立った、15 年前の文通相手を探す主人公。
だがその文通相手は、25 年前にはこの世にいなかったという…

「人を殺してしまいました」と書き残した彼女を追う、青春回顧サスペンスアドベンチャーが公開されています。
√Letter ルートレター」です。

ルートレター

先に言っておきます。
このゲーム、サムネ画像が手紙を渡す女子高生なため、ライトノベルだと思ったり、その子とイチャイチャできるギャルゲー、もしくは学生時代を扱った作品だと思っている人も多いようですが、違います。

三十代の男性が主人公で、サムネの女子なんかほとんど出ない、古風なコマンド選択式のアドベンチャーゲームです。

ただ、この画像を見たら…
そういう内容だと思うのも無理はないですよねぇ…

ルートレター イメージイラスト

ぶっちゃけ、サムネ詐欺。

しかし実は、そんなことは些細な問題。
やってみたらもう、色々と気になる点があり過ぎる。

特にヒドいのは主人公。
無礼で高圧的、人の迷惑を意にも介さず、目的のためなら手段を選ばない人物で、しかも普段は物静かなのに突発的にハイテンション。

おかげで行動に共感できないし、違和感がハンパない。
パッと見は文芸的な雰囲気で、「角川ゲームミステリー」を自称していますが、角川文庫的なものを思い浮かべていると全力で投げたくなるのでご注意下さい。

価格は 1400 円。買い切りゲームなので課金などはありません。
PS4 / Vita 版は 4000 円以上だったので、それと比べると安いのですが…
セールでないと、ちょっとオススメできないかな…
(3/21 現在、セールで 400 円になっています)

ルートレター 美術館
ルートレター テレビ局

改めて言いますが、ノベルゲームではなく、コマンド選択式のアドベンチャーゲームです。
「移動」「聞く」「調べる」などのコマンドを実行し、島根県の各地を巡りながら調査を進めていきます。
「考える」のコマンドでヒントが出てくるので、悩むことなく進められるでしょう。

サムネ画像の高校生のシーンは 15 年前のこと。
しかも文通相手の島根県の高校であり、東京に住む主人公はそのクラスのことを全く知りません。

主人公は消印のない手紙を最後に消息を絶った文通相手を探すため、島根県を訪れますが、その行方が知れないばかりか、誰も彼女について話そうとしません。
彼は真相を探るため、手紙に出てくるクラスメイトの元を訪ねて回ります。

全体のシナリオ自体には魅力があると思います。
彼女の正体、過去の事件、謎の多いストーリーには引き込まれるものがあるのですが…

ただ、やっていてすぐに「アドベンチャーゲームとしての拙さ」が各所で目に付くことになります。

まずは大仰な演出。
不必要に大文字を使って雰囲気ぶち壊し。
人物のカットイン演出も、見た目は凝っているのですが、どうでもいい雑談でも乱発されるため不自然で大げさ。

重要な場面では「追求モード」になって、逆転裁判やダンガンロンパのように情報や証拠品で反論するシーンになるのですが、ここも大文字+集中線の演出がいちいち派手すぎで、「もうちょっと落ち着け」と言いたくなります。

さらに「マックスモード」呼ばれる、大声で叫ぶような(もしくは声のトーンを変えるような)場面があるのですが、いきなり怒鳴っているように見え、ここまで来るとハイテンションを通り越してヤバい奴にしか思えません。
開発者がこの作品をどっちに持っていきたいのか解らなくなります。

さらにコマンドに対する反応が少なく、テキストも乏しい。
例えば 逆転裁判 だったら、捜査に関係ないところを調べても色々と雑談が入るし、人になにかを見せると関係ないものでも反応があるし、パートナーがボケて主人公がツッ込む笑える会話が繰り広げられたりしますが、そういうのがほとんどない。

神社の灯籠を調べても「灯籠がある」の一言で終わるし、関係ないものは見せようとしても「見せない方が良さそうだ」で終わるし、もうちょっとこう、プレイヤーを楽しませてくれないものかと…
テキストを用意するのが大変なのは解りますが、スマホでも逆転裁判が何作も出てるので、それを見た後だとなぁ…

「そんなゲームじゃないから」というのであれば、せめて 神宮寺三郎 のように統一された雰囲気が欲しかったところです。

ルートレター 旅館の女将のカットイン
※宿屋のおかみさんとの雑談でナナメカットイン。
色々と演出は凝っているのですが、こういうのはもっと使う場面を考えて欲しい…
いまいち情緒があるようでないんだよな…

ルートレター 松江城のガイド
※主人公はガイドブックを持っていて、名所で使うとその場所の解説を表示してくれます。
言な絶えそね のような地方 PR アプリでもあり、捜査は名所巡りをしながら進んでいきますが、無理やりな宣伝感はありません。

ルートレター 飯テロ
※そして飯テロ。主人公はゲーム内で、島根グルメを毎日頂きます。
この辺の PR はうまい。ゆるきゃらの「しまねっこ」も出てきます。

ゲームは 10 の章に分かれています。
1つの章は 40分~1時間ほど。
割とテンポ良く進みます。(寄り道や雑談がないからだけど)

章の合間には 15 年前の文通の手紙が読み上げられ、それに対する返信を行えます。
過去の手紙に返信するというのもおかしいですが、「あの時、どういう返信をしたっけ…」と昔を思い出す形になっていて、その返信の内容によってエンディングが分岐します。

複数の結末が用意されたマルチエンディングで、2周目にならないと出てこない選択や、到達できないエンディングも存在します。
2周目以降にならないと発生しないイベントもあるようです。

ゲームの長所と言えるのは、グラフィックとサウンド。
特に人物のデザインは、女性は美人で可愛らしく、男性も(何人かは)イケメン、それでいて萌え系ではない、スマホゲームではあまり見られないリアルさと綺麗さを両立しています。

セリフも主人公以外フルボイスで、有名な声優さんが演じており、声優ファンの批判がちらほらあるようですが、私は悪くないと思います。
ヒロインの声が高過ぎな印象はありますが。

ルートレター 手紙のシーン
※姿の見えないヒロインと交わされた 10 通の手紙。
1つの章は、1通の手紙を追いながら進んでいきます。

ルートレター 返信の選択
※そして返信。これで終盤が変わるので重要。
2周目以降は、すでに選んだことのある選択は暗く表示されます。

そして冒頭でも述べた、最大の短所は… 主人公の性格。
サスペンスものの主人公としては前代未聞。

誰に対してもタメ口の無礼極まりない人間で、初対面の相手に暴言連発、当たり前のように怒らせる。
嫌がる相手の元にも平気で踏み込み、情報を得るための手段として真っ先に考えるのは、嫌がることをするか脅すか。
本当に自分のことしか考えていない人物で、自己中心を通り越し、もはやサイコパス。

最初からそういうヤクザな人間という設定なら解りますが、むしろ優しい人として、しかもプレイヤーが演じる主人公として描いているからゲンナリする。

「プライドが高い人だから頭の薄さに触れないであげて下さいね」と言われている相手を、情事をネタにして脅迫し、暴言連発で散々脅し、「カツラかぶってんじゃねーよハゲ!」と罵った挙げ句、マックス大声で「俺がはぎ取ってやる!」とか鬼か!!

他にも初対面の女性に「お喋りビッチとはお前のことだろう!」と叫んで追い出され、「どうしてあんなに怒ったんだ?」とか、コミュ障にも程がある。
それがノスタルジーミステリーの主人公とか恐いわもう。

ルートレター 主人公の暴言集
※相手が女だろうと初対面だろうと関係なし。
暴言、威圧、脅迫、嫌がらせ、何でもやって情報を得る圧迫系主人公。
当然ながら嫌われますが、そんなの意に返さずズケズケと何度でも乗り込んでいく。
他人の気持ちを思いやるなんて考えは微塵もない。

ルートレター 主人公のマックスモード集
※マックスモードのマックス暴言集。誰かコイツを止めてくれ!
中にはネタ(選んだらミス)なセリフもありますが、この主人公だからこそのセリフ。
罵倒と大声が最大の武器で、彼には島根より神室町がふさわしい。

おそらくゲームを理解していない人が、「巷のゲーマーは逆裁とかダンガン的な、こんな演出を喜ぶんだろう」みたいな浅い考えで、本来のコンセプトだった角川ミステリーや島根の風情などを無視して作り上げた結果、こんなチグハグなものになってしまった気がします。

とは言え、出し方は悪いですが演出やグラフィックのクオリティは高く、全体のボリュームもあり、非常識な主人公と場違いな演出で雰囲気が壊されていることと、作り込みの浅さを除けば、アドベンチャーとして悪くありま…
いや、良い訳はないか。

しかし大作(中作?)アドベンチャーであることは確かです。
超アッパー系コミュ障サイコパス主人公が探偵まがいの活動をする「角川ゲームミステリー」。
そんな作品をツッ込ながらプレイしたい方には、セール中ならお勧めです。

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※Youtube 公式 PV

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