Titan HD
ボードゲーム ドイツゲーム
Dauba-Dauba Enterprises(アメリカ)
価格 600 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2018/5/12
約40年前のファンタジーウォーゲーム
ドイツゲームの古典的名作の1つ。
魔獣の軍団を率いる巨人の1人となり、ボード上を移動しながらより強力なモンスターを召喚、その戦力で他のタイタンを駆逐して進撃する、ウォーシミュレーション風の iPad 用ボードゲームアプリが公開されていました。
「Titan HD」です。
原作の「Law of Titan」(タイタンの掟)が公開されたのは 1980 年。
モノポリーやクルード、RISK ほど古典ではありませんが、まだドイツゲームという言葉が一般的では無かった頃の初期のボードゲームです。
この作品はドイツゲームと言うよりは、アナログ・ウォー・シミュレーションゲームに近く、ボード上の移動はスゴロクのように行いますが、戦闘になるとターン制の戦術シミュレーションになります。
ルールが非常に複雑で、コマの種類も多く、今となっては洗練されていない印象も受けますが、「ボード+RPG+戦術 SLG」という内容には深みがあり、今でも人気なのが頷ける作品です。
原作(タイタンの掟)は 2008 年に「Titan」というリニューアルバージョンが作られていて、それを iPad 用にしたのがこのアプリ。
公開は 2011 年で、今さらと言えますが…
ドイツゲームは押さえておきたいのがあり、リクエストもあったので取り上げておきたいと思います。
価格は 600 円。買い切りゲームなので課金や広告はありません。
アップデートが続いており、もちろん 64bit(iOS11)に対応しています。
英語表記の複雑なボードゲームなので、レビューと言うより、ルール解説を中心にお届けしたいと思います。
ゲーム内容はそこから察して頂ければと思います。
プレイヤーは2~6人。
AI のレベル(★)は3段階で、タップで変更できます。
ゲームが始まると、各プレイヤーに総大将である Titan(タイタン)、副将と言える Angel(エンジェル)が1体ずつと、下級兵士である Centaur(ケンタウロス)、Gargoyle(ガーゴイル)、Ogre(オーガ)が2体ずつ配られます。
まずはこれを、タイタンかエンジェル1体と、兵士が3体の、合計4体ずつの2つの軍団に分けます。
※分割例。こんな感じで4体ずつで。決まったら「Done」を。
その前に選ぶ部隊マークはどれでも良いです。
軍団の分割が終わったら、次は「移動フェイズ」。
サイコロが振られ、その目だけマスの上を移動していきます。
最初のターンのみ、1度だけ振り直しが可能。
ただ、このゲームはあまり自由に移動することはできません。
マスの間には「3つの矢印」「1つの矢印」「丸印」「棒印」の4つがあって、基本的に矢印の方にしか進めません。
多くのマスは一方通行で、進める方向は決められています。
丸印はその手前に止まった時のみそちらに進むことができ、棒印はその手前に止まると次は強制的にそちらに進まされます。
そしてこのアプリの大きな問題は、この矢印や丸印が小さすぎて見にくいこと…
拡大も出来ないし、もうちょっと見やすくできなかったのかというのが本音です。
※どアップにしたらこんな感じ。3つの矢印が基本ルート。
棒印は外側に強制移動、丸印は内側へ移動可能。
1つの矢印はタワーと中央部にしかありません。
※マップの移動経路を大雑把に書くとこんな感じ。
外側は時計回り、内側は反時計回り。外から内に入るには接点に止まらないといけない。
なお、他の味方部隊がいるマスには進入できません。
サイコロの目が3の場合、全ての軍団が3つ移動できます。
1つや2つだけ進む、ということはできません。
移動したくない軍団はその場に留まることができますが、全軍団が移動しない選択はできません。
移動を終えて三角のボタンを押したら「召喚フェイズ」に移行。
止まった土地の種類に応じたモンスターを召喚できます。
この召喚にも複雑なルールがあり、例えば軍団にケンタウロスがいて、森か草原に行けばケンタウロスを補充できます。
ケンタウロスが2体いて草原に行けばライオンを召喚でき、ケンタウロスが3体いて森に行けばウォーベアを呼び出せます。
ライオンは2体いれば火山でミノタウロスを、3体いれば砂漠でグリフォンを得られます。
最初はよく解らないと思いますが、移動時にどこに行けば何を得られるのかボード上に表示され、画面下にある「Beasts」のボタンを押すと召喚の図表も表示されるので、この点についてはそれほど解り辛くはありません。
※これが召喚表。Beasts ボタンで表示できるのを覚えておくこと。
茶色の線が2本なら、下位のモンスターが2体いる状態で茶色のマスに止まれば、その先のモンスターを召喚できます。
モンスターには得意な地形があり、茶色と赤い線があるミノタウロスなら、赤と茶色のマスが得意な土地。
モンスターは1体でもいれば、得意な土地で同じモンスターを補充できます。
タワー(白マス)は特殊な場所で、最下位モンスターの3つを無条件で召喚可能、Titan がいれば Warlock を召喚でき、何でも良いので3体いれば Guardian も呼び出せます。
また、タワーにいる時に6が出ると「タワーテレポート」を行え、周囲6マスの好きな場所にワープできます。
前述したように一方通行が多く、好きなマスに移動し辛いゲームなので、うまく上位モンスターを召喚できるかはサイコロ運にも影響されます。
とりあえず数を増やすのが先決ですね。
ただし1つの軍団には7体しか所属できません。
最大数になって、それ以上のユニットを得たい場合は軍団を分割する必要があります。
2ターン目以降、サイコロを振る前に「分割フェイズ」があります。
ここで好きな軍団を2つに分けることができます。
ただし双方の軍団に最低2つ以上のユニットが必要なため、分割するには4つ以上のユニットが必要です。
もちろん敵の目の前で分割すると襲われたりするのでご注意を。
もし他のプレイヤーの軍団のいる場所に入ると戦闘シーンに移行します。
戦闘シーンはこんな風に、専用のバトルフィールドが表示されます。
まずは防御側からユニットを配置。
配置と言うより、画面の端から移動力の分だけユニットを前進させる形で、移動力の高いユニットならいきなり前の方に配置できます。
ユニットには「パワー」と「スキル」の2つの能力値があります。
パワーは体力 兼 攻撃回数。
攻撃時にはこの数だけダイスが振られます。
そしてパワーの分だけダメージを受けると倒されます。
ダメージを受けてもダイスの数が減るということはありません。
スキルは移動力 兼 命中率。
相手とスキルが同じ場合、ダイスの目が123ならハズレ。456ならヒット。
1つ低いとハズレの目が1つ増え、1234でハズレ、56ならヒット。
2つ低いとヒットは6のみです。
1つ高いなら12でハズレ、3456でヒット。2つ高いならハズレは1のみ。
与えるダメージはヒットしたダイスの数になります。
他に飛行マークと弓矢マークが付いている場合があり、飛行マークのユニットは障害物や他のユニットを無視して移動できます。
弓矢マークは遠距離攻撃が可能。
移動を終えて三角ボタンを押し、攻撃フェイズになったら、ユニットを選んで攻撃対象を選択。
ダイスが振られて攻撃が行われます。
※矢印の数値は期待値(平均値)より高かったか低かったかの模様。
通常、攻撃時にはダイスの目が画面左上に表示され、どういう計算で何ダメージ受けたのかが解ります。
ダイスの部分をタップすると表示が消えて、次の攻撃に移ります。
「Strike Details」のスイッチをオフにすると、ダイス表示がなくなってゲームが手早く進みます。
一通りの攻撃を終えて三角ボタンを押すと、今度は防御側の反撃フェイズになります。
パワー以上のダメージを受けていても、そのターンの反撃は可能です。
(つまり攻撃と反撃は実際には同時に行われている設定)
反撃フェイズが終わったらパワー以上のダメージがあるユニットはボードから取り除かれ、次のターンへ。
以後はこの繰り返し。
ただし次のターン以降、敵に隣接しているユニットは移動できません。
戦場によっては Bog(沼)や Sand(砂地)などの特殊なマスがあります。
その地形が得意なユニットだと問題ありませんが、そうでないユニットは沼には入れず、砂地は飛べない場合、移動力が多く必要です。
また Tree(木)は遠距離攻撃の妨げになります。
一部のマスには地形効果もあり、茂みは得意なモンスターなら防戦で有利、得意でないモンスターが入ると攻撃で不利になります。
※激しくバトル中。赤い丸印の数値がダメージです。これがパワー以上のキャラは反撃フェイズの後にダウン。
ダメージは相手にトドメを刺して、まだ余っている場合、近くに他の敵がいればそちらに振り分けられます。
遠距離攻撃時のダイスの数はパワーの半分(端数切り捨て)。射程も同じ。
※塔で防戦中。地形効果もうまく活用したいところ。
特殊な地形はそこが得意なユニットではなく、飛行ユニットでもない場合、進入に移動力が3必要です。
地形効果は以下のようになっています。
Bog(沼): 得意でない者は入れない。
Bramble(茂み): 得意だと防戦でスキル+1、得意でないと攻撃時にスキル-1。
Sand(砂): 戦闘には影響しない。
Dune(砂丘): 得意なら砂側からの攻撃でダイス+2。得意でなく平地側からの攻撃はダイス-1。
Slope(丘): 得意なら上からの攻撃でダイス+1。得意でなく下からの攻撃はスキル-1。
Drift(雪原): 得意でないと戦闘時にダメージ+1。
Volcano(火口): ドラゴンしか進入/通過不可。ドラゴンはダイス+2。
Wall(塔の城壁): 中からの攻撃はスキル+1。外からの攻撃はスキル-1。
Criff(崖): 三角のある場所は崖で通行/攻撃不可。
戦闘でもう1つ重要な点は、防御側には4ターン目に援軍が来ること。
ただし常に来る訳ではなく、その土地を得意としているユニットが軍勢に含まれている必要があります。
条件が合っていれば、4ターン目にその土地で召喚可能なユニットが1つ戦場に追加されます。
これは戦闘が終わった後も(防御側が勝利すれば)軍勢に加わったままになります。
それを防ぐため、攻撃側は速攻をかけるのも戦法の1つでしょう。
一方が全滅したら戦闘は終了。
勝った側には、倒した敵ユニットに応じたスコアが加算されます。
スコアは勝敗には直接影響しません。
しかしスコアが 100 を越えるごとにエンジェルが軍勢に加わります。
さらにスコア 100 ごとに総大将であるタイタンのパワーが1つ上がります。
初期のタイタンはパワー6・スキル4ですが、スコアが 200 ならパワー8、300 ならパワー9になります。
加えてスコア 400 を越えると「タイタンテレポート」という特技を習得。
移動フェイズで6が出ると、タイタンの軍団は敵軍団のいる場所にワープできます。
またスコア 500 で強力なアークエンジェルが仲間になります。
よってスコアは高まるほど有利になります。
戦闘開始前には Fight の他に「Flee」(逃走)も選べます。
逃走しても部隊は全滅しますが、相手に入るスコアが半分になるので、勝ち目がないならこちらを選ぶのも手。
なお、戦闘は7ターン目までで、オーバーすると攻撃側の負け(全滅)になりますが、これで勝っても防御側はスコアを得られません。
※戦闘開始前の画面。これは攻撃をしかけた場合。相手には援軍が来ます。
Concede は相手の勝ちを認めるボタンなので押さないように。
相手の合計戦力値は 96 なので、勝てれば 96 点貰えます。
それによって 100 点を超えるなら戦闘後にエンジェルが降臨しますが、ユニットに空きがない場合は加えられません。
そしてゲームの目的は、他のプレイヤー全員のタイタンを打倒すること。
総大将であるタイタンが倒れると、他のユニットがどんなにいてもその軍勢は全滅、敗北です。
タイタンは突出して強い訳ではないので、割とあっさりダウンします。
よって前に出すのは厳禁。
レベルの低いコンピューターは前に出すことも多いので、集中攻撃すれば劣勢でも逆転できたりします。
基本的に消耗戦なので、プレイヤーが多いなら漁夫の利を狙い、最後に残った敵タイタンの部隊に総攻撃をかけるのが定石でしょう。
消極的すぎるとスコアで大差を付けられ、不利になることもありますが。
※これは弱い部隊が襲われてピンチだったけど、突っ込んできた敵タイタンに攻撃を集中して7ダメージを与え、倒すのに成功したところ。
タイタンが倒れた時点でその軍勢は全滅します。
※最終結果。最後にダイスの出目の集計グラフが表示されます。
スコアはスコアというより経験値であって、高い人が勝利ではないのでお間違えなく。
ウォーボードゲームをドイツゲーム的に楽しめる作品、と言えるでしょうか。
近年の遊びやすさを考慮したドイツゲームではなく、ウォーゲームフリークでも楽しめるコシのある内容です。
オリジナルは非常に時間のかかるゲームだったようですが、iPad 版だともろもろの処理をコンピューターが行ってくれ、大量にあるボード・コマ・ダイスのやり取りも必要ないので、サクサク進みます。
それでも重量級と言えますが、だからこそデジタル化の利点も大きいですね。
2011 年のアプリですし、インターフェイスに改善して欲しい部分もありますが、ドイツゲームの前身たる名作ボードゲームを iPad でプレイ出来るのは、ドイツゲームファンには嬉しいところでしょう。
・Titan HD(Android 版、Google Play へ)
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ドイツゲーム / ウォーゲーム アプリリンク
古典ボードゲーム
- モノポリー(アプリは公開終了)
- iM Detective(クルードの亜種)
- Lux(RISK の亜種)
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