- サガ スカーレット グレイス
緋色の野望
RPG
スクウェア・エニックス(日本)
価格 4800 円、買い切りアプリ
レビュー公開:2018/8/10
2005 年以来の買い切り新作「サガ」
好きな場所に向かい、自由な冒険を行える、一本道のゲームに対するアンチテーゼのような「フリーシナリオ」システムを持つ RPG「サガ」シリーズ。
ゲームボーイで発売された Sa・Ga はフリーシナリオではありませんでしたが、経験値の存在しない特徴的なシステムを持ち、スーパーファミコンやプレステで展開された「ロマンシング サガ」「サガ フロンティア」シリーズも、技のひらめきや連係攻撃など、変わった特徴を持っていました。
そんなサガシリーズの最新作(の改修版)が、スマホ / タブレットでも公開されています。
「サガ スカーレット グレイス 緋色の野望」です。
今回も風変わりな作りになっていて、世界をほぼ自由に移動でき、ダンジョンはなく、イベントは選択によって様々に分岐します。
バトルは回数が少ない分、戦略性と難易度が非常に高く、一筋縄では行きません。
そしてスクエニの RPG らしい、派手で美しい戦闘シーンが流れます。
もちろん技を閃いたり、連係攻撃が発動するといった、サガらしさも健在。
しかし巷の意見は賛否あり、ダメな人は全くダメ、良いと言う人は絶賛する、両極端な印象です。
解りにくくて難しい戦闘、把握しにくい世界観とシステムは、理解に相応のやり込みが必要です。
会話のみで進むイベントには味気なさもあります。
ただ、先行していた PS Vita 版(『緋色の野望』の表記がないもの)は戦闘時の読み込みが非常に長く、そこが大きな批判点になっていたのですが、それはスマホ版(緋色の野望)では解消されています。
読み込み時間はほぼなく、そこを批判している意見はスマホ版には当てはまりません。
他にも『緋色の野望』では、イベントやキャラの追加、技や術の追加、敵やボスの追加、ボイスの強化、周回プレイ時の要素の追加などが行われています。
そのおかげで無印版のプレイヤーから「俺らが買ったのは有料 β かよ!」とか言われてますが…
定価は 4800 円。(8/27 までは発売記念セールで 3800 円)
Nintendo Switch / PS4 / Steam 版は税込 6200 円なので、それと比べるとかなり安め。
iOS / Android 版はオープニング映像がなく、テクスチャの画質が低いようですが、画面が小さいので見た目の差は感じないし、オープニングは無理になくても良いでしょう。
(同じかどうかは解りませんが、オープニングは Youtube でも公開 されています)
ゲームの主人公は4人。
将軍家のお嬢様、ワルだった農民、陶芸家の女性、処刑人。
それぞれ異なるストーリーが展開されます。
と言っても、一部のイベントの展開が異なるという感じであり、ゲーム自体は前述したように「フリーシナリオ」ですから、各地にあるイベントをどのようにクリアしていくかはプレイヤー次第です。
ゲームはマップ画面と戦闘シーン「のみ」で進行します。
ダンジョンとか町の中はありません。
ダンジョンっぽい場所に入ったらすぐに戦闘が発生し、町は背景の一枚絵と、買い物や会話をするボタンがあるのみです。
イベントの大半はいわゆる「サブイベント」で、やってもやらなくても構いません。
しかしやらないと何も得られませんし、戦闘しないと強くなれないので、とりあえず各所のサブイベントをこなしながらゲームを進めていくことになるでしょう。
ただ今作のフリーシナリオは、自分はあまり良さを感じませんでした。
各所でイベントは見かけるものの、進め方が解らなくなったり、敵が強かったり、お使いが面倒だったりして後回しにすることが多く、なんとなく進んでいたこともあって、全体が漠然としていたからです。
なにか区切りを付け辛く、区切りがよく解らないイベントも多い。
主人公がレオナルド(元ワルの農民。このキャラは必須イベントが極端に少なく、最初から最後までフリー状態で進む)だったのも要因なのですが、大きな事件を見かけることがなく、心が躍るような出来事もなく、淡々と進みます。
イベントにあまり事件性を感じないのは、探険も演出も乏しく、会話だけで進むからというのもあるでしょう。
町や村では吟遊詩人から各地の伝承を聞くことが出来ますが、最初は意味がよく解らない。
そしてメインとなる物語に乏しく、代わりにサブイベントが豊富にあって、会話とバトルだけのイベントをこなしながら、キャラクターを強くしてボスの打倒を目指すと言うのは… 何かに似ていると思いませんか?
そう、ソーシャルゲームです。
このゲーム、スマホのゲームを多くやっている私には、とてもソシャゲっぽく思えます。
スクエニはこのシステムを「フリーワールドシステム」と呼称していますが、何のことはない、ダンジョンやフィールドが省略され、マップで行き先を選択してバトルや会話をするだけの、スマホによくあるソシャゲ的 簡易 RPG システム。
もちろん本当のソシャゲではないので、課金ガチャやスタミナはありません。
戦闘が長いため、ダンジョンを探険するようなゲームには出来ないのもあるでしょう。
でもスマホでこれをやっても新鮮味はなく、できれば色々な町を歩いたり、ドラマチックなストーリーを見たりしたかったなぁ、というのが本音です。
装備もドロップや探索で得られるものは少なく、素材を集めて強化するソシャゲ型が中心。
わざとスマホゲームに寄せたのか、それとも手軽なフリーシナリオを求めた結果、たまたまソシャゲと同じ道に至ったのかは解りません。
意外と巷には「ダンジョンがなくて心配したけど、サクサクとイベントが進むので遊びやすくて楽しい!」みたいな意見が見られるので、スマホゲーム / ソーシャルゲームの経験がないユーザーには新鮮なのかもしれません。
ただ私的には、家庭用ゲーム機のソフトが「こっち側」なのはちょっと残念ですね…
※マップ画面はこんな感じ。ダンジョンも町中もないので、移動シーンはこれのみです。
建物がペラペラで、地面には紙のような表現があり、ペーパークラフト風になっています。
※とある村の鍛冶屋。町はこんな風に風景画とキャラクターの立ち絵のみ。
鍛冶屋で装備を鍛えると「その町の鍛冶屋の友好度」と「全体の鍛冶屋レベル」が上昇します。
全体の鍛冶屋レベルは全ての町に影響し、これが上がらないと上位の装備は作れないので、強化はどんどん行いましょう。
ただ、装備の強化に必要な素材を確認し辛いのが難点…
※「陣形」はサガシリーズ定番の要素。
やや解り辛いですが、陣形は選択後に再度陣形ボタンを押して決定、その後にメンバーボタンで配置を変更できます。
陣形は仲間の加入で増え、仲間は主にイベントで加わりますが、誰が仲間になるかは主人公で変わってきます。
一方、バトルシーンはかなり独特で、他に類を見ないシステムです。
まず、難易度が驚くほど高く、1戦1戦が死闘。1回の戦闘時間も長め。
そのため多くのバトルエリアで、戦闘を行うのは1回か2回だけ。
しかしたとえ EASY の敵と1戦するだけでも、ナメてかかると窮地に陥りかねません。
もはやこのゲームに「ザコ」はいません。
敵の強さはこちらの強さ(及びゲーム進行)に合わせられているので、序盤でも HARD ランクの敵に挑戦して勝つことは可能ですが、どんなにこちらが強くなっても緊張感のある戦いが続きます。
そしてバトルシステムは TCG(トレーディングカードゲーム)のルールを、ターン制の RPG に組み込んだようなものになっています。
バトルが始まると、まず画面下に敵と味方の行動順(タイムライン)が並べられます。
そして敵が行う行動もチェックできます。
プレイヤーはそれを見ながら各キャラのコマンドを入力していきますが、全てのコマンドには「BP コスト」があります。
BP(バトルポイント)は言わば TCG のマナであり、最初は4で、4消費する技を使ったら残りは0になるため、他のキャラはコマンドを入力できなくなります。(防御になる)
1しか消費しない技なら4人が使えますが、消費1の技は威力が低め。
BP はターンごとに全快し、そしてターン終了時に最大値が1つずつ増えていきます。
コマンドの入力を終えたら最初のキャラから行動が実行されますが、技の中には割り込み技「インタラプト」や、反撃技「カウンター」があり、必ずしも順番通りになるとは限りません。
インタラプトは「特定の属性の攻撃を敵がしようとした時に、その直前に割り込んで実行される」もので、それで倒せれば攻撃は受けません。
カウンターは「自身が攻撃を受けた時にガードして反撃する」もので、挑発と合わせたり、味方が減って集中攻撃されそうな時に有効。
もし敵がこれらを準備している時はヘタに殴らない方が良いですが、これらの準備技(リザーブ技)は表記が「???」になっていて、何を準備しているのか解りません。
一度戦えばどの敵がどんな技を使うのか(どの属性に対する反撃技を持つのか)が解りますが、初めて見る敵や、複数のリザーブ技を持つ相手だと戦いにくい。
準備状態は間接攻撃を当てれば破ることができますが、破ろうとして弓矢を撃ったら「相手が準備しているのは突攻撃に対するインタラプト」で、割り込み反撃されたということもあります。
もちろんこちらも相手の攻撃に合わせたインタラプトを狙うことができ、「相手のカウンターに対してインタラプトが発生」といった連鎖も起こります。
これらにより、様々な技を駆使することが必要なバトルになっています。
※戦闘時のコマンド入力画面。下部に並んでいるのがタイムライン。
下にある「技 CHECK」のボタンを押すと敵の行動を確認できるので、必ず見てからコマンドを決めること。
※ピコーン! 技を閃くと電球マークが出てくるのはサガシリーズのお約束。
武器には同じ種類でも「標準系」「技巧系」などがあって、覚えられる技が違うので注意。
ただ、技巧系でしか覚えられない技でも、習得後は標準系で使えます。
※剣をクルクル回して敵を眠らせるマインドステア。
ちゃんと敵が剣先を見てるのが笑えます。
このゲームは回復がほとんど出来ないため、マインドステアや空気投げ、足払い、天地二段といった敵の行動を止める技が、攻略のカギを握ります。
状態異常の成功率は「集中力」のステータスが影響するため、足止め役はそれを高める装備を使いましょう。
※敵のインタラプト発動! 先に攻撃を食らいます。
斬・突・打のどの属性が返されたのか覚えておき、次は使わないようにしましょう。
属性が解らない時は、反撃されない全体攻撃でやり過ごす手も。
自分のインタラプト技はコマンドを選択すると、相手が返せる技を使っているかタイムラインで確認できます。
そしてゲームの大きな要素であり、しかしルールが解りにくいのが「連撃」。
敵を倒すと、画面下の攻撃順(タイムライン)から、そのキャラのアイコンが取り除かれます。
それによって敵同士、味方同士がくっつくと連撃が発動します。
「パズループのようなシステム」と言うと解る人もいるでしょうか。
例えば、以下のように敵と味方が並んでいたとします。
味方A 味方B 味方C 敵a 味方D 敵b 味方E 敵c 敵d 敵e
敵a を倒すと、その間が詰められ、味方 C と D がくっつきます。
これにより C と D の連撃が発動、さらに味方 C に繋がっている 味方 A と B も連撃に参加します。
敵b を倒した場合は、味方 D と E だけが連撃を行います。
しかし味方 E が倒された場合… 敵の b と c がくっついて、敵 d と e も参加する敵の連撃が発動します。
しかもそれで味方 D が倒されると、さらに連鎖で敵がくっつくので、敵 a b c d e による連撃も発動します。
こうなるとほぼ負け。
ただ、それで味方 B が倒された場合… 味方 A と C がくっついて、こちらの連撃が発動。
敵の攻撃で味方の連撃が発動したり、その逆もあり得ます。
連撃は一気に戦局を変えますが、思わぬ幸不幸で発動することもあるため、気が抜けません。
連撃が起こるとそれに参加したキャラクターは、次に低コストで技を出せるようになるため、ますます有利になります。
行動順が変わる技や、敵の行動順を遅らせる「バンプ技」もあり、これで連撃を狙うことも可能です。
これらタイムラインを使った技の応酬により、強敵にも対抗でき、逆に弱い敵に不覚を取ることもあります。
ルールさえ解れば楽しめるバトルで、このゲームを評価している人の多くは「バトルが面白い」を長所としています。
ここは私も同感です。
ただ、解り辛いうえに難しいので、初見殺しでもあります。
数千円するゲームなので、すぐ見限られることは少ないようですが、前述したように時間もかかるし、批判している人はこの戦闘にも否定的ですね。
なお、負けてしまってもすぐ「再挑戦」できます。若干有利になるおまけ付き。
ただ、キャラクターは倒れるごとに LP(ライフポイント)が減少します。
過去のサガのように「LP 0 で死亡(ロスト)」ということはありませんが、しばらく参戦できなくなるので、延々と再挑戦することはできません。
また、このゲームに「逃げる」はなく、負けた時は「再挑戦」か「タイトルに戻る」しかないので、どうしても勝てない敵に出くわした時のため、小まめにセーブしておきましょう。(オートセーブもありますが)
※連撃のルールは解り辛いですが、把握しないと戦いになりません。
敵を倒して味方をくっつける、敵はくっつけない、というのが基本ですが、敵味方の技によって順番が思わぬ形で入れ替わり、不意の連撃が起こることも。
味方が倒されそうな時は、その味方が倒れることで発生する連撃を考慮しましょう。
※カウンター発動! なんだか無想転生状態。
カウンターやインタラプトでも行動順は変化します。
敵のカウンターは間接攻撃で崩せますが、間接攻撃は弓矢だけではありません。
大剣の地走り、長剣の音速剣、槍の咬竜波など、近接武器にも間接攻撃技はあります。
※そして宇宙。さらにスーパーサイヤ人。
だんだんエスカレートしていくバトル物のお約束。
最上位技の習得には(体術以外)鍛冶屋ランク VII 以上の武器が必要です。
上位技は BP コストが高いため、それを使うためにもコスト軽減ボーナスを得られる連撃が必要。
前述したようにこのゲームの評価は賛否分かれていて、ネット上ではこんな会話が散見されます。
「4時間プレイしたけど全然面白くない。クソゲー!」
「たった4時間で何言ってんの? 最低 10 時間はプレイしてから言えよ。にわか乙」
これはすごくこのゲームを表わしていて、つまり 10 時間はプレイしないと面白さが解らない、それまでに離脱してしまうと全然楽しめないゲームと言うこと。
独特な戦闘システムを理解して、使える技も増え、それを楽しめるようになるのは数時間経ってからだし、何の繋がりも感じられないバラバラで解りにくいシナリオや世界観が解ってくるのは 10 時間ほど経ってからです。
正直私は、これが「サガ」でなかったら続けていなかったかもしれません。
周回プレイを重ねる段階になると、多様な変化を楽しめるようになるかもしれませんが…
全てがすぐ明らかにされる Wiki がある昨今、フリーシナリオを楽しむのは難しいご時世の気も…
とは言え、別のキャラでスタートすると同じイベントでも全く違う展開になったりする、周回前提の作り込みは感じられ、長くやればやるほど楽しめそうなゲームであることも確かです。
じっくり長くプレイできる、買い切りの新作 RPG を探している人には良いでしょう。
賛否入り交じった印象のため、価格の高さもあって簡単に「オススメ」とは言い辛いのですが、何よりサガの新作ですし、ゲーマーなら経験しておきたい作品だと思います。
・Android、Steam
・Nintendo Switch / PS4 (Amazon)
※Youtube 公式 PV
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